蒼の瞳、紅の瞳
■ 39.完敗

「え・・・?」
『解らないかい?白哉だよ。私は、白哉を手放すくらいなら、死んだ方がましだよ。』
咲夜の言葉に玲奈は目を見開いた。
「どうして・・・?どうしてよ。貴女みたいになんでも持っている人がどうして、そんな・・・。」


『それは違うよ。何を持っていても、白哉が隣に居ないなら、私の世界は色褪せる。確かに、私は何でも持っているのだろう。大切な仲間も、地位も、力も。皆が私に色々なものを与えてくれた。でも、私が、心から求めて、自分から手を伸ばしたのは、白哉だけだ。私に、愛することを教えてくれたのは、白哉なのだ。私は、白哉を、愛している。』
咲夜は玲奈の瞳を真っ直ぐに見つめてそう言った。


すると、玲奈の手から力が抜け、斬魄刀が地面に落ちる。
玲奈もまた、崩れ落ちた。
「・・・負けよ。私の負けだわ。それでいい。だから、早く解毒をして。お願い。」
そう言って玲奈は涙を流す。


すると、白哉が下りてきた。
「・・・いつまで遊んでいるつもりだ。」
そう言って、咲夜を横目で睨む。
『あれ?ばれてた?』
その言葉とともに咲夜の震えはピタリと止まる。


「当然だ。」
『でも、斬られたのは本当だぞ?』
「兄がその程度で死ぬわけがなかろう。」
『その割には斬られたとき焦って居なかったか?』
「斬られたことに驚いただけだ。・・・大体、何故斬られたのだ。」
白哉は小さく問うた。


『斬れと命じたからだ。』
「・・・わざわざ傷を作るな。」
『ふふふ。心配してくれたのか。嬉しいなぁ。』
ニヤニヤと顔を覗き込む咲夜から、白哉は顔を背ける。
「・・・え?」
二人の会話に、玲奈は唖然としている。


『あはは。ごめんね?』
「え?どうして、だって、毒は・・・?」
『私に毒は効かないのさ。』
咲夜はそう言って、自らの傷を癒す。


「どういう、こと?」
『私は漣家の女だよ。巫女の力を持っている。巫女の力とは浄化の力。毒を浄化するなど、朝飯前だ。』
「そういうことだ。」
「え?じゃあ、さっきのは・・・。」
『言ったことに嘘はないが、私は死なない。』


そう言った咲夜に玲奈は完敗だ、と思った。
こんな人に勝てるわけがない。
こんな人から何かを奪えるはずがない。
こんな人を殺せるはずがない。
それなのに私は、この人を憎むことすらできない。
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