蒼の瞳、紅の瞳
■ 35.抜刀

「まさか・・・。」
『ふふ。そうだよ。すべては仕組まれていたのさ。私によってね。』
「騙したの!?」
玲奈の顔は怒りで真っ赤になった。


『うん。そうだね。でも、先に手を出したのは君だよ?私と白哉が不仲だ、とか、私が蓮を囲っている、とか。噂を流したのは君だろう?』
「そんなこと、知りません。」
『ふぅん?まぁ、いいけどね。』


「こんな、こんなことをして、許されると思って居るの?」
『許されるね。』
「・・・お兄様が黙っては居ないわ。」
『ふふ。二宮家、現当主、二宮喜代志、ね。』
「・・・何を笑っているの?」


『だって、面白いから。ねぇ、白哉。二宮家って朽木家の敵になるの?』
「ならぬな。我が朽木家があの程度に揺らぐはずがない。」
『だよねぇ。漣家だって、二宮家など敵じゃない。』
「でも!こんなの二宮家への侮辱だわ。」
玲奈は声を荒げる。


『だから?』
そんな玲奈を咲夜は冷ややかに見つめた。
「いくら朽木家でもこんなことをすれば他の貴族からの信頼を無くすわ。」
『そうかもね。これが、ただの嫌がらせならね。だが、君と白哉の見合いは調査の一環だ。』


「・・・どういうこと?」
『あれ?君は知らないの?自分の家が何をしているのか。』
「え?」
彼女には思い当たることがないらしい。


『・・・かわいそうに。』
「何?なんなの?」
咲夜の瞳に玲奈は怯えているようだ。
『君の家は、麻薬の密売を行っていたのだよ。それも、大規模な、ね。』


「うそ。そんなの嘘よ。」
『残念ながら本当だ。』
「なぜ、どうして。」
『さぁね。しかし、君は自分の家の噂も知らないのか?』
「え?」


『上級貴族の間では、二宮家は麻薬で富を得ている、という噂があったのだよ。全く、そんなことも知らないで、私に喧嘩を売ろうなどと、笑えてくるね。』
「う、そ。」
玲奈は崩れ落ちる。


可哀そうな子だ。
何も知らされず、身内に利用されていたんだ。
それで、朽木家に輿入れすることを信じて疑わず、無邪気に喜んでいた。


『君に同情はするよ。だがね、君は他人を傷つけた。相手が私だったからこのような方法をとることが出来たが。お蔭でこちらは大した被害はないしな。・・・白哉は少し大変だったろうけれど。』
「少しではない。この数週間、私は何度そなたを閉じ込めようと思ったことか。」
『あは。ごめんね。今日からちゃんと一緒に居られるんだからいいだろう?』


「・・・嘘よ。」
白哉と話していると、小さくそんな声が聞こえた。
「嘘よ!!そんなの、私は信じないわ!!」」
そう言って、彼女は刀を抜いた。


『こんなところで刀を抜くとは。それに、私に勝てると思って居るのか?』
「勝てるわよ。」
『へぇ。強気だな。じゃあ、相手をしてあげよう。外に出よう。』
咲夜はそういうと、窓から外に飛び降りた。
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