蒼の瞳、紅の瞳
■ 31.悪知恵が働く

「それは、つまり・・・。」
説明が終わると、浮竹は複雑そうな顔をする。
「二宮家の悪事を暴くためにわざと姉さまが矢面に立たれるということですか?」
『そういうことになるな。』
「そんな・・・。兄様はそれでいいと?」


『あぁ。協力してくれると。浮竹、ルキア、たぶんこれから迷惑をかけることになるだろう。先に謝っておく。悪いな。これから、私と白哉について多くの者が君たちのもとに訪れるだろうが、誤解を解く必要はない。曖昧に笑って誤魔化しておいてくれ。』
「・・・わかりました。それが、兄様と姉さまのためになるなら。」
「解った。引き受けよう。」


『すまない。きっと君たちには嫌な思いをさせるだろう。』
「いいさ。」
頭を下げた咲夜に浮竹は笑顔を向ける。
『・・・蓮。』
「はい?」
『君も巻き込んでしまったな。本当は私が守ってやれればいいのだが・・・。』


「いいえ。僕だって、自分で自分を守れます。」
『だが、君が一番嫌な思いをするだろう。毎日冷たい視線を向けられるかもしれない。』
「大丈夫です。僕はもう一人じゃありません。それに、先生がやろうとしていることが間違っているとも思いません。」
蓮は真っ直ぐに咲夜の目を見てそう言った。
『・・・そうか。ありがとう。』


それから一か月。
咲夜と白哉の喧嘩はあっという間に噂となって瀞霊廷を駆け巡った。
仕事中は二人が目を合わせることもない。
そんな様子に周りの者たちは離縁の話までし始めた。


また、蓮を漣家に泊まらせているため、蓮と咲夜の噂は真実だとほとんどの隊士たちが信じ始めていた。
『あぁ。疲れた。』
咲夜はなるべく六番隊の隊舎に行くことはせず、雨乾堂に入り浸っていた。


蓮は黒刃と白刃とともに書類配達に行っている。
心無いことも言われているようだが、例の噂を十三番隊の者たちは全く信じていないらしい。
お蔭で、毎日笑顔を見せてくれる。


「だろうな。」
そんな咲夜の様子に浮竹は苦笑する。
『いやぁ、噂ってすごいね。』
「ははは。大抵の者は噂話が好きだからな。」
『それにしても予想外に大事になって居るな。』


「そりゃあ、朽木家の全面協力だからな。よくもまぁ、こんなことを朽木家の家臣が許したものだ。」
『ふふふ。それは、私が白哉と家に居る様子を彼らは知っているからな。それに、麻薬の件は他人事ではない。他の貴族たちにも協力を求めているらしい。もちろん、信頼できる者たちだけにだが。京楽家も手を貸してくれている。』


「それで?なにか証拠は見つかったのか?」
『それがなぁ、なかなか尻尾を掴めないらしい。麻薬の流通ルートもよく解らないようでな。』
「そうか。」
『ふふ。でもね。』
咲夜は悪い笑みを浮かべた。
「なんだ?」


『二宮家から、内々に、見合いの話が届いた。二宮の姫を側室にしないかと。』
「本当か?」
『あぁ。まぁ、そんなものを贈ってくるのは二宮家だけではないんだがね。』
「他からも来ているのか?」


『そうらしい。まったく、白哉はモテるなぁ。さすが私の夫だよ。』
咲夜は他人事のようにそう言った。
「ははは。余裕だな。」
『ふふん。当然。正直疲れるが、面白くなってきた。』
そう言って、咲夜はまた悪い笑みを浮かべた。


「お前ってやつは本当にアレだよな・・・。」
そんな咲夜に浮竹は苦笑する。
『いいじゃないか。浮竹はそんな私でも友人で居てくれるのだろう?』
「まぁな。俺も最近は人のことを言えない気がしてきたからな。」
『ははは。年をとると、悪知恵が働くものだよね。』
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