蒼の瞳、紅の瞳
■ 30.噂を利用する

咲夜に膝枕をしたまま白哉がお茶を飲んでいると、
『誰か来た。』
そう言って咲夜は起き上がり、白哉に顔を近づける。
そして、小さな声で呟く。


『今、外で聞き耳を立てている奴がいる。』
「二宮家の者か?」
白哉も小声で答える。
『だろうな。いい機会だ。私たちはこれから喧嘩をして、私が漣家に戻っていることにしよう。白哉、適当に合わせろよ。』
「あぁ。」


『白哉の莫迦!!しばらく家には帰らない。漣家に戻る!!』
咲夜はわざと大声でそう言った。
「勝手にしろ。」
白哉もはっきりと、冷たい声を出した。
『じゃあな。愛しているよ、白哉。』
咲夜は小さな声でそういうと、思い切り戸をあけて出て行った。


それから、咲夜は隣の副官室に入る。
すると、目を丸くした、蓮の姿があった。
「どうしたんですか!?さっきの大声は何です?」
『おいで、蓮。十三番隊に行く。』


理由を言うことなく、咲夜は蓮を副官室から連れ出す。
執務室の前を通るとき、恋次が何ともいえない視線を送ってきたが、咲夜はあえてそれを無視した。
他の隊員たちも奇妙なものを見るように、こちらを見ている。
すでにこれほど噂が浸透しているのか。
まったく、女とは恐ろしいな。


「先生!?待ってください!!」
蓮が慌ててついてくる。
だが、咲夜は足を止めることなくさっさと隊舎を出た。
「うわぁ!?」
そして蓮を抱え上げて、瞬歩で十三番隊に向かったのだった。


『浮竹、入るぞ。』
突然現れた咲夜に浮竹とルキアは目を丸くした。
「漣?」
「姉さま?」
『ルキアも居たか。』


咲夜は遠慮なく部屋に入った。
そしてようやく蓮を降ろす。
「うわ、目が回る・・・。」
そう言って蓮は足元から崩れ落ちた。


『あはは。すまないな。大丈夫か?』
「えぇ、なんとか・・・。」
「漣?どうしたんだ?」
『あぁ。ちょっと相談だ。君たち、私と白哉に関する噂を知っているか?』
「いや、俺は知らない。」


「・・・それは、兄様と姉さまが不仲だという噂ですか?」
ルキアが言いづらそうに言った。
『ルキアは知っていたか。』
「はい。私に聞きに来たものがおりまして。」
『そうか。それから、私が蓮を囲っているという噂もあってな。』


「えぇ!?そんなわけないじゃないですか!第一、先生と朽木隊長が不仲だなんてどこから・・・?」
蓮は驚きの声をあげる。
『そうだな。だが、噂というものは厄介だからな。浮竹、すべてが終わるまで、蓮を預かってくれないか。』
「それは、構わないが・・・。一体どういうことだ?」
咲夜は混乱した様子の三人に理由を話し始めた。
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