蒼の瞳、紅の瞳
■ 28.遭遇してしまう

この声は・・・。
嫌な予感がしつつも咲夜は振り向いた。
そして、相手の顔を見て気が重くなる。
『・・・何かご用でしょうか?』
二宮の姫だ。


「いえ、修練をしようと思ってきただけにございます。」
『そうでしたか。』
「あら、この方が・・・?」
彼女は蓮を見る。
『えぇ。私の教え子です。蓮、ご挨拶を。』


もう少し、顔を合わせなくて済むと思ったのだけれど。
向こうからやってくるとは。
「はい。南雲蓮と申します。六番隊第十三席の二宮玲奈さんですね。初めまして。」
蓮は屈託なく笑って、彼女に挨拶をする。


「初めまして。どうして私の名前をご存じなの?」
「信頼関係を結ぶにはまず相手の顔と名前をきちんと覚えること。僕はそう教わりました。それに僕、名前と顔を覚えるのは得意なんです。」
「そうですの。」


蓮の純真さに気圧されている。
大方、どんな人物か品定めに来たのだろう。
だが、蓮は私の教え子だ。
まだ修行をはじめて一か月しか経っていないとしても礼儀などはきちんと叩き込んである。


『蓮、その重箱をもってついてきなさい。』
「え?・・・はい。」
咲夜の突然の言葉に戸惑ったようだったが、蓮はすぐに荷物を取ってくる。
『では、私たちはこれで。存分に修練なさってください。私たちが居ては邪魔になってしまうでしょうから。』
咲夜はそういうと、相手が何か言う前に修練場を出て行った。


あぁ、疲れた。
修練場を出て、咲夜は隊舎に向かった。
「先生?どうしたんですか?さっきの続きはやらないんですか?」
蓮が不思議そうに尋ねてくる。


『いや、何でもないさ。気が変わっただけさ。・・・蓮、君はその重箱を洗ってイヅルに返してきなさい。ちゃんとお礼も忘れずにね。私は隊主室に行ってくるよ。君は戻ったら、明日の分の書類を仕上げてしまってくれ。』
「はい、わかりました。」
咲夜の言葉に頷いて、蓮は駈けて行った。


『はぁ。今度から十三番隊の修練場に行こうかな。何でくるんだ・・・。まだ業務中だろう。あの姫はちゃんと仕事しているのか?』
咲夜はぶつぶつと文句を言いながら、白哉のいる隊主室に向かった。
途中、給湯室によってお茶を淹れることも忘れずに。
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