蒼の瞳、紅の瞳
■ 27.素直じゃない

「・・・南雲蓮、だったか?」
「はい。」
『蓮、知っているとは思うが、冬獅郎は君と同じく、霊術院を飛び級で首席卒業している。顔見知りなのか?』
「何度か、書類配達のときに・・・。」


『そうなのか。』
「松本が捕まえるんだよ。こいつのこと気に入ったらしくてな。あの二人を菓子で釣って、それをこいつが回収に来たところをがばっとな。」


なるほど。
それで窒息しそうになって居るところを冬獅郎が助けるわけか。
まぁ、他隊でも可愛がられているのならいいさ。


「あはは。はい・・・。そこから、助けていただくこともありまして。いつもありがとうございます。」
蓮が眉を下げながら言う。
「いや、こっちこそいつも松本が悪い。」
「いえ、そんな。」


『・・・なんか、君たち可愛いな。』
二人の様子に咲夜はポツリと呟いた。
「何か言ったか?」
冬獅郎の耳にはしっかりと届いていたらしい。


『あはは。そう睨むなよ。なんか、こう、小さいものが、戯れている感じだ。』
「小さいって言うな!!・・・ったく。お前、妙な噂が流れてるの、知ってるか?」
『さっきイヅルに聞いたよ。まぁ、噂でしかないけれどね。』


「だろうな。放って置いていいのか?」
『あぁ。私は、な。』
「こいつは?」
冬獅郎は蓮に目を向けながら、咲夜に問う。


『うん。そのうち浮竹あたりに預けるさ。』
「・・・そうか。」
『心配してくれたのか?』
そう言って咲夜は冬獅郎の顔を覗き込む。


「違ぇよ。」
その視線から逃れるように彼はそっぽを向いた。
『ふふ。ありがとう。優しいねぇ。』
咲夜はそう言って頭を撫でる。
「やめろっての。」
冬獅郎はその咲夜の手を振り落とした。


『いいじゃないか。君の髪の毛は柔らかくていいよねぇ。』
咲夜は再び冬獅郎の頭を撫で始める。
「・・・やめろ。俺はもう帰る。」
そう言って踵を返すと、さっさと背を向けて行ってしまった。
『・・・素直じゃないなぁ。』


『さて、休憩もしたし、始めるか。』
「はい。」
イヅルの持ってきた重箱はすっかり空になって居る。
卵焼きももちろん美味しかったが、稲荷寿司も美味しかった。


一家に一台イヅルが欲しいなぁ。
まぁ、朽木家の料理に不満があるわけではないのだけれど。
「・・・咲夜さま。」
そんなことを思いつつ、咲夜が伸びをしていると、後ろから声がかかった。
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