■ 20.悪気はない
「はぁ。なんだか、熱が上がりそうだ。」
咲夜の質問に脱力した浮竹は、着替えが終わると布団に倒れこむ。
『大丈夫か?』
それを見た咲夜は心配そうに浮竹の顔を覗き込んだ。
「誰のせいだ・・・。」
『・・・私か?』
「どう考えてもお前のせいだろう・・・。」
『それは、悪いな。そんなつもりじゃなかったんだが。』
咲夜の言葉に浮竹は拗ねたようだった。
そんな浮竹の頭を咲夜は撫でる。
京楽は面白そうに二人を見つめた。
「大体、お前こそどうなんだ。」
『何がだ?』
「白哉だよ。」
『白哉?』
「あぁ。」
『まぁ、ないこともないな。』
咲夜はさらっと答えたが、浮竹はそれにまた赤くなる。
「・・・普通に答えるなよ。」
『駄目なのか?』
「お前には恥じらいというものがないのか。」
『夫婦なのだから当然だろう?跡継ぎも必要だしな。』
咲夜はきょとんとして答えた。
二人の様子に京楽はまた笑い始める。
「ははは。咲ちゃん、その辺にしておかないと、浮竹が可哀そうだよ。」
「・・・お前も面白がっているくせに何を言っているんだ。」
『何で浮竹は拗ねているんだ?』
咲夜は本当に訳が分からない様子である。
「ほら、浮竹、機嫌をなおしなよ。咲ちゃんは悪気があるわけじゃないんだから。浮竹を心配しての言葉だろう。ちょっと、アレなだけで。」
「・・・はぁ。漣に普通を期待するのが間違っていたな。」
浮竹が呆れたように答える。
「そうそう。それに、外で固まっている子もいるようだしね。」
京楽はそう言って、襖をあけた。
すると、そこには顔を赤くした蓮がいる。
『蓮?』
咲夜がその様子に首を傾げると、蓮は言った。
「皆さん、なんて会話をしているんですか・・・。」
そんなこんなで、浮竹は再び布団の中に戻ったのだった。
[
prev /
next ]