蒼の瞳、紅の瞳
■ 18.夢の中でも心配

「ん・・・。」
三人がゆったりと話をしていると、浮竹が身じろいだ。
『浮竹?起きたのか?』
咲夜が声を掛けると、浮竹の瞼が開く。
「漣・・・。」
『煩かったか?』


「いや、よく眠れた。・・・京楽も居るのか。」
「やぁ、大丈夫かい?」
「あぁ。だいぶ楽になった。」
『何か食べられそうか?粥ならすぐに用意できるが。』
「そうか。なら、頼む。」
咲夜は浮竹の額に手を当てた。


『うん。熱も下がっているようだな。蓮、粥を用意してもらってきてくれ。』
「はい。」
蓮はそう言って、部屋を出ていく。
「喉が渇いた。」


『ほら。』
そう言った浮竹に咲夜は水を飲ませる。
「・・・ん。」
浮竹は水を飲むと、一息ついた。


「・・・なんだか、昔の夢を見た気がする。」
『そうなのか?』
「あぁ。お前と出会ったころかな。」
『どんな夢だ?』


「お前は、いつも一人で、空を見ていた。空き教室や、放課後の誰も居ない教室で、夕焼け色の空をじっと見つめていた。」
浮竹はポツリポツリと話し始めた。
まだ、ぼーっとしているらしい。


『それで?』
「俺はそれを見ていたんだ。ただ、見ていた。泣いているような横顔だった。」
『そうか。』
「そしたら、遠くから笑い声が聞こえて、それがお前の声だったような気がして、あれ?と思っていたら、目が覚めた。」


『そうか。さっき、京楽と昔の話をしていたせいかもな。』
「そうだね。ちょうど、咲ちゃんと出会ったことの話をしていたんだ。」
「・・・そうか。じゃあ、あの笑い声はお前だったのか。漣が、笑ってくれて、良かった。」
浮竹はそう言って微かに微笑んだ。
そしてまた、微睡みのなかへと戻っていく。


『京楽。』
「なんだい?」
『これは、きっと、寝ぼけているんだよな?』
「たぶんね。」
『私はそんなに浮竹に心配をかけていたのだろうか。』


「あはは。そうだろうね。浮竹の夢に咲ちゃんが出てくるほどには心配していたんだろうね。」
『寝ぼけている浮竹はなんだか、子供みたいだな。』
「そうだね。でも、咲ちゃんが笑って良かったというのは、本心だと思うよ。僕もそう思ったし。」


『ふは。君たち、何だか可愛いなぁ。』
咲夜が笑顔でそう言った。
「やめてよ。こんなおじさん捕まえて何言ってるの。」
『だって、なんていうか・・・ふふふ。』
「なんだか、嬉しそうだねぇ。」
『うん。嬉しいな。』


私は幸せ者だ。
こんなに私を思ってくれる友人が居て、私を大切にしてくれる夫が居る。
私を慕ってくれる教え子も居る。
昔の私じゃ考えられなかったなぁ。
そう思って、また自分は幸せ者だと感じたのだった。
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