蒼の瞳、紅の瞳
■ 17.家族の話

「失礼します。」
二人が話をしていると、蓮が入ってきた。
『蓮か。』
「はい。お茶をお持ちしました。・・・どうぞ。」
そう言って差し出された湯呑からはゆらゆらと湯気が立っている。


「いやぁ、悪いね。」
京楽は差し出された湯呑を受け取った。
そして、すぐに口を付ける。
すると、京楽の顔が驚きに変わった。


「美味しいねぇ。」
そんな京楽を見て、蓮は照れたように笑った。
「実は、僕の実家は流魂街で茶屋をやっているのです。」
『そうなのかい?』
蓮の言葉に咲夜の瞳が輝いた。


「はい。といっても、小さな茶屋ですが。」
『じゃあ、お菓子も作れるのかい?』
「えぇ。それなりには。」
『それはいい!!』


「・・・今度作ってきましょうか?」
咲夜の様子に蓮はそう言った。
『本当か!?何でも作れるのか?』
「レシピがあればそれなりのものは作ることができますよ。和菓子も洋菓子も。」
『洋菓子も作れるのか?』


「はい。僕の家がやっている茶屋は緑茶だけでなく、紅茶や烏龍茶なども出しているので。」
『そうなのか。じゃあ、クッキーとやらが食べてみたい。最近、私はあまり現世に行くことがないものでな。洋菓子を食する機会がほとんどないのだ。』
「はい。わかりました。」
キラキラと目を輝かせた咲夜に蓮は微笑みながら答えた。


「咲ちゃんて実は甘党なんだね。」
そんな咲夜を見て京楽は意外そうに呟いた。
『ふふふ。あとで、君の家の茶屋にも行ってみたい。』
「そんな・・・。なんでもない茶屋ですよ。」


『それがいいんじゃないか。それに、君の家族を見てみたい。ご両親は健在か?兄弟は居るのか?』
「えぇと、両親はいます。それから、兄と妹が一人ずつ。」
『蓮は誰に似たんだ?』
「顔は・・・母ですね。このくせっけの髪は父に似ています。紫の瞳の色は祖父に似たらしいのですが。」


「こらこら、咲ちゃん、ちょっと落ち着いて。蓮君が困っているじゃないか。それに、浮竹が眠っているんだからもう少し静かにしないと。」
咲夜の矢継ぎ早の質問にたじろいでいる蓮を見て京楽が助け船を出した。


『いや、わるい。つい、な。私は、家族とのいい思い出がなくてな。兄弟も居ないし。白哉は・・・私の弟のような存在だったが。』
京楽の言葉に咲夜はシュンとした。


「いえ、あの、僕の家族なんかの話で良ければいくらでも。・・・普通の、何でもない家族ですが。」
そう言って蓮は咲夜に微笑む。
『ふふふ。ありがとう。』
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