蒼の瞳、紅の瞳
■ 13.お見舞い

『浮竹、大丈夫か。』
書類の配達を終え、咲夜たちは雨乾堂に来ていた。
先ほどから浮竹への見舞いの菓子に黒刃と白刃が手を出そうとして蓮に小声で怒られている。


すでにあの二人を手なずけているのか。
あとで蓮をあの二人の教育係に任命してあげよう。
「あ、あぁ。」
浮竹はまだ調子が良くないらしい。
呼吸も乱れている。


『辛いのか?』
「あぁ。」
横になったままで答える浮竹は弱々しい。
咲夜は浮竹の額に手を当てる。
『熱もあるようだな。薬を持ってきたんだが、何か食べたか?』
「いや・・・。」


『そうか。食べられそうか?』
「いや、今はいい。」
『そうか。じゃあ薬は後で飲んでくれ。』
咲夜はそう言って薬の入った巾着を枕元に置いた。
そして、浮竹の胸に手を当てる。


『本当は薬で治した方がいいんだがな。少し治癒能力をつかうぞ。・・・よく眠れていないのだろう?隈が出来ている。』
「あぁ。息苦しくてすぐに目が覚めてしまうんだ。」
『そうか。』


咲夜の手から淡い光が漏れ始める。
暫くすると、浮竹の呼吸が整い始めた。
『眠っていいぞ。暫くこうしている。』
楽になってきたのか、瞼が重そうな浮竹に咲夜はそう言った。
「あぁ、そう、させて、もらう・・・。」
浮竹はそういうと、眠ったようだ。


『さて、私はしばらくここから動けない。黒刃に白刃、白哉にそう伝えてきてくれ。今日は定刻になっても帰れないかもしれない。』
「「わかった。」」
そう返事をすると、二人は姿を消した。


『蓮は・・・そうだな、梅干を買ってきてくれ。それから、ここの三席達に頼んで浮竹に粥を作ってもらっておいてくれ。二刻ほどすれば、浮竹も目が覚めるだろう。』
「わかりました。」


『それから、ルキアに今日はもう、浮竹は仕事にならないと伝えてくれ。浮竹の分の仕事は私に回してくれていいとも。』
「はい。では行ってきます。」
蓮はそう言って静かに雨乾堂から出て行った。


半刻ほどして蓮が帰ってきた。
何やら疲れている。
『どうしたんだ?』
「いえ・・・ここの三席の方たちは浮竹隊長を敬愛していらっしゃるのですね。」


あぁ、あの二人の浮竹好きは今に始まったことじゃない。
二人に気圧される蓮を想像して咲夜は苦笑した。
『ははは。それは、大変だったな。それで、粥は頼んできたか?』
「はい。浮竹隊長が起きるころに持ってくるそうです。梅干も三席達が持っていきました。」


『そうか。まぁ、あの二人は騒がしいが、悪い子たちじゃないんだ。浮竹が大好きなだけで。』
「あはは。そうみたいですね。よく解りました。」
蓮は苦笑する。


『蓮、悪いがお茶を淹れてくれないか。三人分だ。』
「三人分、ですか?」
『あぁ。私と、君と、それから京楽の分だ。』
「京楽隊長、ですか?」
『そうだ。こちらに向かっているようだからな。』


咲夜の言葉を聞いて、蓮は霊圧を探ってみた。
だが、蓮にはそれが感じられない。
「そうですか。では、淹れてきますね。」
蓮は半信半疑で雨乾堂をでたのだった。
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