蒼の瞳、紅の瞳
■ 7.給湯室

白哉の湯呑をもって給湯室に向かうと、女性隊士たちの話し声が聞こえてきた。
三人ほどいるらしい。
「ねぇ、見た?」
「見た見た!」
「「朽木隊長の奥さん!!」」


どうやら私が話題になって居るらしい。
悪口でも言われているのだろうか・・・。
「お綺麗よねぇ。」
「本当に!」
「隊長の従姉なんですって。それに漣家の元当主らしいわ。」
「そうなの。言われてみれば似ているわね。」
「それに、とってもお強いんですって。」


・・・悪口を言われているわけではないらしい。
咲夜は少しほっとしながらも、これでは白哉に茶を淹れられないではないか、と内心愚痴る。


「でも、なんで六番隊にいらっしゃるのかしら?」
「新入隊員を特別に指導しているんですって。」
「えぇ!?なんていう子?」
「確か、南雲蓮っていう子よ。霊術院を首席で卒業したらしいわ。」
「そうなの。優秀なのね。それで、どこの貴族の子なの?」


「それが、流魂街出身らしいわ。」
「本当に?」
流魂街出身と聞いて彼女たちの声のトーンが下がる。
「えぇ。・・・どうしてそんな子が特別に指導してもらっているのかしら。」
「本当よね。私たちだって指導して頂きたいものだわ。そうすれば、朽木家と・・・。」


何だか雲行きが怪しくなってきた。
咲夜はこれ以上待つのも面倒になったので給湯室に入っていくことにした。
『お話し中、失礼するよ。お茶を淹れたいんだが・・・。』
咲夜の声に、中に居た隊員たちが一斉に振り向く。


「あ、あぁ、どうぞ。」
『お茶の葉はどこにあるのかな。』
「えぇと、こちらです。」
『そうか。ありがとう。』


薬缶を火にかけると、咲夜は白哉の湯呑を洗い、自分の湯呑も用意した。
急須に茶葉を入れ、お湯が沸くのを待つ。
先ほどから視線を感じるが、気にすることなく、咲夜は外を眺めていた。
すると、一人が話しかけてきた。


「あ、あの・・・。」
『なんだい?』
「朽木咲夜さまで、いらっしゃいますよね?」
やけに丁寧な物言いだ。
それに、仮面のような笑顔。
それは、貴族特有のもので。
どこかの貴族の娘なのだろうか。


『あぁ、そうだが?』
「私、二宮玲奈と申します。」
『二宮家の者か。』
「はい。」


二宮家は上級貴族である。
だがしかし、最近いい噂を聞かない家でもある。
面倒だが、貴族らしい会話で適当に相手をしておくか。
『お噂は伺っておりますよ。何でも、領内で鉱脈が見つかったそうではありませんか。』


「まぁ、よく御存じですのね。」
とつぜん口調が変わった咲夜に驚くこともなく、彼女は続けた。
『朽木家の者として当然のことにございます。』
咲夜はにっこりと答える。
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