蒼の瞳、紅の瞳
■ 3.隊長との手合せ

「つ、強い・・・。」
簡単に切られた木刀を見て、隊員の誰かがそう呟いた。
「つか、え?なんで切れるんだ?」
恋次は未だによくわかっていないらしい。


『それは私が強いからだ。』
「いや、それは十分知ってますけど。木刀って普通何かを切れるモノじゃないっすよ?」
『そうだな。』
「じゃあ、なんで・・・?」
『だから、ちゃんと使えば木刀でもモノが切れるのさ。紙で指を切ることがあるだろう?あれと同じようなことさ。』
咲夜はそう言い切った。


「・・・やっぱり咲夜さんって規格外なんだな。」
改めてそう思った恋次であった。


『さて、次は白哉の番だな。何で戦う?』
「白打。」
『了解。』
その言葉と同時に咲夜は木刀を放り投げた。


『さて、皆よく見ておくといい。白哉は型が綺麗だぞ。戦いの中であまり白打を使わないんだがね。』
「特に必要ないからな。」
『ふふふ。まぁ、千本桜が便利すぎるからね。』
「そうだな。・・・行くぞ。」


『いいぞ。来い。』
それと同時に白哉は蹴りを繰り出した。
しかし咲夜はそれを難なく受け止める。
そして、咲夜もまた蹴りを繰り出した。
攻守が流れるように続いていく様子に、隊士たちは思わず見惚れる。


『・・・私に勝てると思って居るのか?』
「当然だな。」
『私に勝ったことなどなかったと思うが。』
「そうだな。勝てると思ったこともないな。」
『そうなのか?』
「あぁ。兄が規格外なのは私がよく知っているからな。」


『おや?そんな弱気でいいのかい?』
「自分よりも強い相手と普通に戦ったのでは無理だという話だ。」
『ふふふ。じゃあ、ずるでもするのかな?』
「・・・さあな。」
白哉はそういうと、咲夜の後ろに回り込む途中で耳元に息を吹きかけた。


『ふわ!?』
すると咲夜は座り込んでしまった。
「兄の負けだな。」
白哉が満足そうに言った。


周りの隊員たちは何が起こったのかよく解っていないらしい。
もちろんそれは白哉が周りに見えないようにやったからだが。
『ずるっ。ずるいだろう!!何をする!!』
「何がだ?」
『!?』
「私は何もしていないぞ?」


白哉の瞳が面白がっている。
やられた。
ここで耳に息を吹きかけられたと言ってしまえば耳が弱点だと知れ渡ってしまう。
それだけは避けたい。
「どうしたのだ?」
余裕な顔が腹立たしい。


『・・・なんでもない。あーもう、わかったよ。私の負けだ。』
白哉め。
これをやるために白打を選んだな。
斬術ではこんなに近くに寄ることはできないからな。


「そうか。立てるか?」
白哉はそう言って手を差し出してきた。
『立てるよっと。』
咲夜はその手を握って立ち上がった。


「さて、少し長くなってしまったな。以上で入隊式を終了する。この後は上官の指示に従うように。」
白哉の言葉に隊員たちが動き出した。
『あ!待って!!君!南雲蓮!!』
咲夜の声に一瞬隊員たちの動きが止まったが、自分のことでないことに気が付くと、早々に道場から出て行った。
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