蒼の瞳、紅の瞳
■ 2.副隊長との手合せ

『阿散井副隊長。』
にっこりを微笑みながら彼の名を呼んだ。
「は、はい。」
恋次は笑いを堪えながら返事をした。
『手合わせ、していただけますか?』
「・・・へ?」


「・・・咲夜、やめてやれ。何も初日から格好の悪い副隊長を見せる必要はないだろう。」
咲夜の意図に気が付いたのか、白哉が話を合わせてくる。
『あら、阿散井副隊長はそんなに弱いのですか?』
「手合わせしてみればわかる。」


『うーん、でも弱いのならば手合わせをする必要はありませんね。しかし・・・。』
「なんだ?」
『それでは、白哉様の背中を任せるのは心配でございます。』
さも夫を心配しているかのような演技をした。


「ちょっと待ってください!!」
二人の会話に堪忍袋の緒が切れたのだろう。
「解りました!!やりましょう!!」


ふふふ。
単純な奴だ。
「・・・単純。」
白哉がそうポツリと呟いた。


「さて、それでは異例ではございますが、我が六番隊副隊長阿散井恋次と、朽木咲夜さんの手合わせをご覧ください!それでは、始め!!」
何故か司会をしている理吉の掛け声により、咲夜と恋次による斬術の手合わせが始まった。


カン、カンと木刀のぶつかり合う音が道場に響く。
『あら、副隊長なのにこの程度なのかしら?』
咲夜はわざと恋次を煽る。
「まだまだ!!つか、その口調やめません?」
咲夜の言葉に恋次は一気に攻撃に出た。


はたから見れば、咲夜が押されているように見える。
実際は咲夜がすべて受け流しているのだが。
『あはは。そうだな。いい加減疲れたから、やめる。隊士の皆さん、私は普段こんな感じだ。普通に話しかけてくれていいからな。白哉への苦情も受け付けるぞ?』
咲夜は恋次の攻撃を受けつつも隊士たちの方を向いてそう言った。


「余裕っすね。」
咲夜の行動が恋次にさらに火をつけたらしい。
『そりゃあね。恋次に負ける私じゃないよ。』
「そんなこと解ってますよ。」
『うん?負けるの解っていて乗ったのか?』


「咲夜さんと手合わせできるなんて、そうないっすからね。それに、あそこで乗らなかったらそれこそ格好悪いじゃないですか!」
『あはは。確かに。』
「大体、護廷隊の中で咲夜さんに敵う人っているんですか!?」


『うーん・・・。山じいと戦うのは嫌だなぁ。疲れちゃうし。』
会話をしながら木刀がぶつかり合う。
「それって、総隊長と普通に戦えるってことっすよね?」
『あはは。そんなこともあるかもね。』


「真面目にやらぬか。」
会話をしながらの試合に白哉がそういった。
『はいはい。・・・全く、我が夫は気が短くて困る。』
「何か言ったか?」
地獄耳だ。


『いえ、何もー?ていうか、白哉はやらないの?』
恋次の木刀を受けながら咲夜は言った。
「やらぬ。」
『えぇー。つまらないじゃないか。私が。』
「どういう意味すか・・・。いや、俺じゃ役不足なのは知ってますけど。」
咲夜の言葉に恋次が落ち込む。


「では、早々に終わらせろ。」
『そしたら相手してくれるのかい?』
「・・・いいだろう。」
『よし。じゃあ恋次、ごめんね。』
咲夜がそう言うや否や、恋次の木刀の刀身が消えた。


「は?」
『はい。恋次の負けー。』
見ると咲夜は木刀の刀身を持っている。
「え?木刀で木刀斬ったんですか?」


『うん。簡単だよ。ほら。』
そう言って咲夜は左手に持った木刀に右手の木刀を振り下ろした。
すると、音もなく木刀が切れて、カランと床に落ちた。
[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -