蒼の瞳、紅の瞳
■ 1.妻としてのご挨拶

季節は、春。
桜が満開である。


『もう一年経つんだな。』
咲夜は新入隊員の入隊式をみて、そう呟いた。
入隊式と言っても隊長、副隊長と上位席官しか出席しないため、咲夜は各隊で行われている入隊式をこっそりと覗いていた。
『やっぱり、隊によって雰囲気が違うなぁ。』


一番隊は山じいの話が長い。
二番隊は形式的にあっさりと終わった。
三番隊はローズさんが音楽を奏で始めて、イヅルが慌てて止めていた。
四番隊は烈さんのたおやかさに新入隊員が見とれていた。
五番隊は真子さんのおふざけに桃が突っ込みを入れていて、漫才のようだった。


そして今、咲夜が居るのは六番隊である。
道場の中で行われているようで、こっそりと、窓から中をのぞく。
隊長が貴族だからか、皆が畏まっているようだ。
その隊長が朽木家歴代最強と謳われているのだから仕方がないのかもしれないが。
隊長の中でも知名度が一番高いからなぁ。


丁度、隊長の挨拶になったらしい。
白哉が壇上に上がった。
チラリとこちらを見たような気がしたが、気にしないでおこう。
白哉は適当な言葉を述べて早々に挨拶を終わらせた。


『なんだ。案外普通だな。』
咲夜がそう呟いて次の隊に行こうとした時、
「咲夜。」
と名が呼ばれた。


『え?』
咲夜は驚いて、ガタリと大きな音を立ててしまった。
皆の視線がこちらに向けられている。
仕方がないので窓から道場に侵入した。
「・・・何をしているのだ。」
白哉が呆れたように問う。


『あはは。見学・・・?』
「ほう。まぁ良い。こちらへ来い。」
うわぁ、なんか嫌な予感。
『いやぁ、それは遠慮したいなぁ、なんて。』
咲夜はそう言ってへらりと笑った。


恋次はもうこの二人のやり取りになれたらしい。
素知らぬ顔で壁際に立っている。
「来いと言っている。」
『・・・はーい。』
機嫌を損ねては新入隊員たちが可哀そうだ。


咲夜は渋々壇上に上がった。
すると、見た顔がある。
あれは・・・南雲蓮じゃないか。
相手も気が付いたようで、軽く会釈をしてきた。
そうか。
あの子は六番隊か。


「自己紹介でもしておけ。」
『へ?なんで?』
「兄の自覚が足りないからではないか?」
『そんなこと・・・ないはず。』
そう言ったら白哉に睨まれた。
何故。


『はいはい。解りましたよ。私は十三番隊の朽木咲夜だ。みんな、よろしくな。』
咲夜がそういうと、新入隊員たちの頭に疑問符が浮かぶのが見える。
何故、十三番隊の死神がここであいさつをしている?
それに、朽木って言ったか?
そんな心の声が聞こえてきそうである。


「・・・私の妻だ。」
咲夜の自己紹介に白哉が付け足した。
すると
「「「えぇー!?」」」
という叫び声が上がる。
南雲蓮は目を丸くしてこちらを見ている。


『新鮮な反応だな。まったく、このために私を呼んだのか?』
「そうだが?」
何か問題でも?と言いそうな顔で白哉はこちらを見た。
『ふふふ。私ってば、愛されてるねぇ。』
「当然だ。」


可愛い奴だ。
さて、仕方がない、真面目に挨拶するか。
『皆様、お静かに。改めてご挨拶いたします。私、朽木家第二十八代当主、朽木白哉の妻にございます。どうぞ、夫婦ともどもよろしくお願いいたします。』
そういって、咲夜は貴族らしく振舞ってみる。


「・・・ふっ。」
すると、噴出したような音が聞こえる。
見ると、恋次が必死に笑いを堪えているようである。
・・・似合わないことをしているのは解っている。


だが、笑われるのは癪だなぁ。
そう思った咲夜は恋次に声を掛けた。
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