蒼の瞳、紅の瞳
■ 30.特別な人たち

『まさか。浮竹は私の大切な友人だ。もちろん京楽もね。彼らは恩人なんだ。二人が居なければ、私はたぶん、今ここに居なかっただろう。二人が居たから、私は今こうして皆と話をしているんだ。・・・昔の私なら、誰も受け入れることなく、誰かに受け入れられることもなかった。』


そうだ。
あの二人が居なければ、私はこんなに他人を信じることが出来なかった。
いつまでも、一人だっただろう。
きっと、こんな風に誰かを愛することもなく、結婚なんてしなかったかもしれない。


『だから、二人は私の大切な友人だ。今までも、これからもね。』
「まぁ、そんな感じよね。お互いに大切に思って居るけれど、それは何ていうか、家族愛に近い感じだもの。見てるとそう思うわ。」
確かに。
乱菊に言われて納得する。


『ふふ。そうだな。二人は私の兄のような存在だ。浮竹も、京楽も、いつも私を守ってくれる。私を思ってくれている。私の我が儘を許してくれる。』
「いいですね。そういうの。」
七緒がポツリと言った。
『あぁ。何があっても、どこに居ても信じられる。白哉への愛する感情とは違うけれど、彼等もまた、特別なんだ。』


「ふふふ。それ、ぜひ本人に言ってあげてください。京楽隊長は咲夜さんが帰ってきてからとても嬉しそうなんです。それまでの隊長は、たまにどこか遠くを見ていることがあって・・・。」
『そうか。伊勢副隊長も京楽を大切に思ってくれているのか。』


「それは、副隊長ですから。」
七緒は照れたように言った。
「七緒ったら、素直じゃないんだから。」
「どういう意味です!?」
七緒は焦りながら問う。
「そのままの意味よ。」


「そういえば、朽木隊長は何時から咲夜さんのことが好きだったんでしょうね?」
話を変えるように伊勢副隊長が言った。
『・・・さぁ?』
「聞いてないの?」
『あぁ。』


「じゃあ、咲夜は朽木隊長のどこを好きになったの?」
『・・・どこだろう?白哉は昔から特別だったし。どんな白哉も好きだからな。私は白哉が可愛くて仕方がないんだ。』
「また、惚気ですか。」
『・・・君たちが聞いたんじゃないか。』


「あら。噂をすれば。朽木隊長が来たみたいよ。」
そう言った乱菊の視線をたどると、確かに白哉が居た。
しかし、こちらへは来ることなく、浮竹と京楽のもとで酒を呑み始めた。
白哉め、逃げたな。


「ねぇ、咲夜。いいこと思いついたんだけど。」
咲夜が恨めしげに白哉を見ていると、突然乱菊が言った。
なにやら思いついたらしい。
なんだか、嫌な予感。


『何だ?』
「今からあそこに行って、朽木隊長にお酌してきてくれない?」
飛び切りの笑顔でそう言われる。
『へ?何故だ?』
「うふふ。いいから、いいから。ほら、これ持ってさっさと行く。」
強引に酒瓶を持たされると、咲夜は立たされた。


「ほら、早く行きなさい。見ててあげるから。」
と乱菊や伊勢副隊長は笑顔だ。
涅副隊長は、何故カメラを構えているのか。
咲夜は疑問に思いつつも、彼女たちから解放されるならと白哉のもとへ向かった。
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