『・・・ふふふ。嫉妬か？』
「五月蝿い。」
そう言って彼は咲夜の髪に顔を埋める。
『白哉。』
咲夜はそう名を呼ぶと手を伸ばして彼の頭を撫でる。


きっと今、彼は拗ねたような顔をしているのだろう。
咲夜はそう思って、また笑う。
「何を笑っておるのだ。」
拗ねてるなぁ。
咲夜は内心苦笑した。
『ふふふ。嬉しいなぁ、と思ってな。・・・君も同じだったんだなって。』


「何？」
『私もだ。私だって、君は私のものなのに、と思うことがある。』
「そうなのか？」
『あぁ。君がその辺を歩いていると、必ず誰かが君を振り返る。君が、ルキアを大切に扱っていると、嬉しい反面少し寂しい。それから・・・君が毎日緋真さんに話しかけているのを見るのも。』


「・・・嫌か？」
『そうじゃないんだ。少し、不安になるだけだ。私でいいのだろうか、私は白哉の支えになれているのだろうか、・・・緋真さんとは何を話しているんだろうか、って。』
「当然だ。私には咲夜が必要なのだ。それに・・・。」
白哉は腕を緩めて咲夜と目を合わせる。


「緋真に話しているのは、咲夜とルキアのことだ。今日は甘味屋に行っていた、今日も咲夜は風のようにふらふらしていて目が離せない、ルキアに見合いの話が来ていて困っている・・・、そんな話だ。」
『毎日毎日、そんなことを話していたのか？』
「そうだ。」


『朝も夜も？』
「あぁ。伝えたかったのだ。」
『え？』
「私は今、幸せなのだと。もう、心配しなくてもよいと。」
『白哉・・・。』


「確かに私は緋真を愛した。だが、私が今愛しているのは咲夜だ。そなたが嫌なら緋真と話すのは控える。」


『・・・やめなくて、いいよ。私が愛している白哉は、私を愛してくれている白哉は、緋真さんを愛した白哉なのだから。それに、私が君を一人にしていた間、緋真さんはずっと君のそばに居てくれたんだろう？それはきっと、亡くなってからも。』
「あぁ。」


『だから、やめなくていい。・・・これからは私も、彼女と話してもいいだろうか？』
その言葉に白哉の表情は驚いたようなものになる。
「いいのか？」


『うん。きっと緋真さんは君のことをずっと心配してくれていたんだ。君の幸せな姿を見せて、安心してもらおう。それから、ありがとう、と伝えたい。白哉を愛してくれた。ルキアに会わせてくれた。お蔭で私は幸せだ。だから、いいか？』
「もちろんだ。」
そうして、微笑んだ白哉に咲夜も微笑んだのだった。
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