蒼の瞳、紅の瞳
■ 25.労を労う

『しかし、暇だな。』
修練場から雨乾堂に戻ってから数刻後。
咲夜は唐突に呟いた。
「そうだな。」
浮竹もお茶を啜りながらその言葉に同意する。


『何でこんなに暇なんだろうな。』
「お前が居るからじゃないか?俺の分まで仕事をやってくれているから助かるよ。」
『だって、隊員たちが私に仕事を回してくれないんだもの。』
そうなのだ。
隊士たちはあの朽木白哉の妻、かつ、浮竹の同期である私に仕事を回すことがない。


「まぁ、仕方ないだろう。定刻になると白哉が毎日迎えに来るんだから。その時に仕事をやらせていたら、隊員たちは気が気でないよ。それに・・・白哉がどれほどお前を大切にしているか、見ていてよくわかるからな。」
不満そうな咲夜に浮竹はそう言った。


『そんなこと気にする必要ないのにな。貴族だろうがなんだろうが、私だって死神なのだ。それに、宗野隊長はいつも隊士たちが定刻に上がれるように皆の仕事を手伝っていた。』
「そうか。」
『・・・これでは、私は邪魔をしているようではないか。』
咲夜は拗ねたように言った。


「ははは。でもなぁ、十三番隊の隊士たちは残業しないぞ?」
浮竹の言葉に咲夜は目を丸くする。
『なんでだ?』
そんな咲夜を見て浮竹は笑う。
「皆が帰るまで、俺が帰らないからだ。」


『・・・それは、自慢げに言うことか?』
「ははは。俺が病弱なことを皆が気遣ってくれるからな。この病弱さが役に立つなら俺はそれを利用するさ。」
浮竹はさわやかな笑みを浮かべている。


『悪知恵の働く年寄りだな。隊士たちは君を早く帰らせるために、仕事を定刻までに終わらせるのか。』
「ははは。そういうことだ。・・・俺だって、隊士たちが大切なんだ。だから、早く家に帰らせてやりたい。それで、よく食べて、よく寝て、次の日も元気に来てくれるといい。俺は、隊士たちがいつも通りに朝の挨拶をしてくるのが嬉しいんだ。」


『ふふ。君らしいな。さて、ではそんな隊士たちのために働くかな。』
何か思いついたのか、咲夜が立ち上がりながらそう言った。
「なにをするんだ?」
『これから仕事を終わらせてくる。だから、明日は隊士たちと宴会でもしようではないか!梅の花もちらほら咲き始めたようだし。』


「おいおい・・・。それは流石に元柳斎先生に怒られるだろう。」
楽しそうな咲夜に浮竹は呆れたように言った。
『いいじゃないか。浮竹のために頑張る隊士たちを労ういい機会だろう?』
「だが・・・。」


『大丈夫さ。準備はすべて朽木家に頼む。うまい酒も、うまい肴も用意してもらおう。私は彼らに何かお礼がしたいのだ。偽っていた私を受け入れてくれた。私の大切な友人と妹をずっと助けてくれている。だから・・・やらせてくれよ。山じいにも許可を貰ってくるからさ。』
そう言って、真っ直ぐに自分を見つめる咲夜に浮竹は頷いたのだった。
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