蒼の瞳、紅の瞳
■ 17.実力と多少の権力

『・・・君の瞳が好きだ。』


家族以外の人に初めてそんなこと言われた。
咲夜の言葉に蓮は驚いた。
この人のことは信じてもいいのかもしれない。
「・・・僕、もう嫌です。僕だって皆と同じように友達が欲しいし、水をかけられたり、殴られたりするのは嫌だ。」


気が付くと、そんな言葉が漏れた。
言葉にするうちにそれが事実であることが実感され、蓮は涙を堪えることが出来なくなった。
涙が頬を流れていくのが解る。


『そうだな。』
頭に温かな手が乗せられる。
「でも、相手は上級貴族で、僕、どうすればいいか解らなくて。」
『うん。よく頑張ったね。・・・君は何をされても自分から手を出さなかったようだね。』
「はい。後のことを考えると怖くて。」


『君の方が実力はあるからな。弱い者いじめだと言われたらかなわないと思ったんだろう?』
「っはい。」
『強くなりたいかい?』
「はい。」
『今の自分を変えたい?』
「はい。」
『よし。では、私が手伝ってやろう。まずは涙を拭きたまえ。』


『さて、落ち着いたかい?』
「はい。」
『あの三人を黙らせるには実力を見せつけるしかない。あと、ある程度の権力も。』
「実力はいいとしても、権力って?」
『ふふふ。まぁ、とりあえずこれを持っていればいいだろう。』
そう言って咲夜は香袋を彼に渡した。


「これは・・・香袋ですよね?」
『そうだな。だが、よく見てくれ。刺繍がされているだろう。この模様がなんだかわかるかい?』
「!!これって・・・。」
『朽木家の家紋だ。』
「どうしてこんなものを・・・?」
彼は不思議そうに咲夜を見た。


『それは秘密。いずれ解る。君が死神になればね。それを帯に結んでおくんだ。そうすれば彼らは君が朽木家と関わりがあるのではないかと考えることだろう。』
「はい。」
『それは君にあげよう。これからも持っていていい。』
「はい!!ありがとうございます。」


『さて、ここからが本題だ。いいかい?まず君はあの三人に捕まる。そして、君が鬼になったらあの三人を捕まえるんだ。そうすれば、私の課題をやる必要はない。そして彼らは課題に苦しむことだろう。』
「え?でもそれじゃあ、引き分けじゃないんですか?」
『私が捕まえるから問題ないよ。』
「あぁ、なるほど。」


『ただし、君は三人とも捕まえること。一人でも逃したら私の課題をやってもらうからな。』
「・・・はい。頑張ります。」
そう答えた蓮に咲夜は満足そうに微笑んだのだった。


そして、二回目、三回目、四回目の隠れ鬼が終わった。
五回目の鬼は蓮である。
「五回目、始め!!」
その声とともに鬼たちはいっせいに探し始めた。
咲夜は蓮の後ろからこっそりとついていく。
すると、あっという間に三人を捕まえてしまった。


『見事なものだ。』
咲夜はそう呟く。
捕まった三人は初めは何やら文句を言っていたようだが、志島は蓮の帯につけられた香袋に気が付いたようだ。
「お前!!それって・・・。」
「これは!」
「・・・なぜこんなものを持っている。」
安西が蓮に聞いた。


「・・・もらったんだ。」
「誰にだ?」
「それは・・・教えられない。」
「しかもこの香、最高級品だぜ。俺の親父だってそうそう手を出せるものじゃないぞ。」
流石は腐っても上流貴族だな。
「・・・ということは本物か?」
「だとしたら・・・。」


ある結論に至ったのか、三人の顔が真っ青になる。
そして、
「「「申し訳ありませんでしたー!!!」」」
といって、三人は逃げて行ったのだった。
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