蒼の瞳、紅の瞳
■ 13.新たな出会い

婚礼に関する儀式も一通り終わり、落ち着きを取り戻した頃、咲夜は霊術院に居た。
特別講師として呼ばれたのである。
いや、本来ならば呼ばれたのは白哉であるのだが。
彼は一度も講師の任を引き受けたことはないのだ。


四大貴族朽木家の現当主であり、朽木家歴代最強と謳われ、六番隊隊長である朽木白哉。
貴族の子弟が多い霊術院では朽木家に近付こうとする者が居たり、朽木家の力で死神にさせてほしいという者が居たりして、何かと面倒らしい。
故に
「行かぬ。」
と即答したのだった。


それで、代わりに咲夜が来たのである。
もちろん、白哉はそれを知らないのだが。
『懐かしいな。』
今は昼休みであるため、昼食を摂る者や昼寝をする者、自主的に稽古をしている者など様々な院生たちがあちらこちらに居る。


咲夜がその様子をきょろきょろしながら見ていると、前からずぶ濡れになった少年がとぼとぼと歩いてきた。
夏ならいいが、今はもう冬である。
この間初雪も降った。
・・・どう考えても普通じゃないだろう。
咲夜は気になって、その少年に声を掛けた。


『どうしたんだい?』
咲夜の声に少年は驚いたように顔をあげた。
身長は咲夜より拳ひとつ分小さく、まだあどけなさが残った顔をしている。
艶やかな癖のある蜂蜜色の髪が風になびく。
そして何よりも印象的だったのは、彼の瞳が左右で異なる色を発していることだった。
琥珀のような右目に、紫水晶のような左目。


「あの、なんでしょうか?」
彼の言葉に咲夜は自分が相手に不躾な視線を送っていたことに気が付いた。
何故だかわからないが、目の前の少年はどこかビクビクしているように見える。
『あぁ、いや、悪いな。・・・ずぶ濡れじゃないか。』
咲夜はそういうと、懐から手拭いを取り出し、彼の頭を拭いてやる。


「・・・!?ちょっ、ちょっと大丈夫です!!気にしないで下さい!!」
『そう遠慮するな。』
「いや、でも、僕、汚いし・・・。」
そう言って少年は俯いた。


『ははは。君たちぐらいの年代の子なんて皆こんなものだろう。あちらこちら駆け回ったり、転げまわったりしているんだから。』
咲夜は少年の頭を拭き続けながらそう言った。
「でも・・・手拭いが汚れてしまいます。こんなに綺麗な手拭いなのに。」
そう言って彼はますます申し訳なさそうに小さくなった。


『いいんだよ。洗えば綺麗になるんだから。さて、髪は乾いたが、これでは風邪をひく。医務室にでも行こうか。着替えの予備があるはずだ。』
咲夜はそう言って彼の手を引いて医務室に向かったのだった。
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