蒼の瞳、紅の瞳
■ 11.夫の登場

「白哉じゃないか。」
「・・・気安く触るな。」
咲夜の後ろから現れた白哉は自らの腕の中に咲夜を閉じ込めて京楽を睨んだ。
「いてて。ひどいじゃないの。僕だって咲ちゃんに触りたい!!」
「黙れ。これに触れることは許さぬ。」


「まぁまぁ。落ちつけよ、白哉。二人とももう挨拶は済んだのかい?」
『いや、まだまだ続きそうだったのでな。じい様と叔母上に任せて逃げてきた。死神のみんなにも見てもらおうと思ってな。』
咲夜は悪戯っぽく笑う。
「そうか。結婚おめでとう。幸せにな。」
浮竹は満面の笑みでそう言った。


『あぁ。』
「なんだよぅ。浮竹ってばずるいよ。」
京楽はそう言って不満げに浮竹を見る。
「そうか?ほら、お前は祝いの言葉はないのか?」
「・・・。」


『ふふふ。そうすねるなよ、京楽。私は祝ってほしいなぁ。なんてったって、君は私の大切な友人なのだから。』
「咲ちゃんも大概ずるいよね。・・・結婚おめでとう。今までに見たどんな咲ちゃんよりも綺麗だよ。」
『そうか。ありがとう。』
咲夜は京楽に向かってほほ笑む。
本当に幸せそうな笑顔だ。


「なんか悔しいなぁ。咲ちゃんがそんな風に笑うなんて知らなかったよ。ねぇ、浮竹?」
「そうだな。白哉、漣を頼むぞ。彼女は俺たちの大切な友人だ。お前であっても傷つけることは許さないぞ。」
「言われずとも。」


即答だな。
白哉の答えとその佇まいから、浮竹は解ってしまった。
この男は本当に漣を愛しているのだと。
そして、彼女を本当に守れるのは、この男なのだろうとも感じた。


思えば、この男は昔から漣のことをよく理解していたのだ。
誰かが教えたわけでもないのに、彼女の不安定さをよく解っていた。
「そうか。」
浮竹は満足そうに笑う。


『ふふふ。浮竹、いつまで私を漣と呼ぶんだい?私はもう、朽木咲夜だぞ。』
「あぁ、そうだったな。」
『咲夜でいい。大体、私を苗字で呼ぶのは浮竹くらいだぞ?』
咲夜にそう言われた浮竹は咲夜の名を呼ぼうとして、やめた。
白哉がこちらを睨んでいることに気付いたからだ。


「いや、これからも漣でいいさ。」
『えー?なんでだ?』
咲夜は自らの夫が浮竹を睨んでいることに気が付いていないようだ。
「漣と呼ぶのは俺ぐらいなんだろう?その方が特別な感じだ。それに、今更呼び方を変えるのもな。」


『・・・それもそうだな。でも、一度くらい呼んでくれたっていいじゃないか。』
咲夜の言葉に浮竹は追い詰められる。
「いや、それは・・・。」


「咲夜。」
唐突に白哉が彼女の名を呼んだ。
『なんだ?』
「・・・咲夜。」
『だからなんだ?』
「名を呼んで欲しいのだろう。」


『いや、そうだけど。それは君じゃなくて・・・。』
と、そこで咲夜は漸く気が付いたらしい。
『君ってばもしかして、自分以外の男に私の名を呼び捨てで呼んで欲しくないのか?』
そんな咲夜に、白哉は言葉を詰まらせる。


「・・・咲ちゃんてば直球だねぇ。」
「そうだな。鈍いのは相変わらずか。」
そんな咲夜に浮竹と京楽は顔を見合わせて笑う。
「・・・当然だ。そなたは私の妻なのだからな。大体そなたはいろいろと無自覚なのだ。そのくらい許せ。」


『白哉ってば可愛いなぁ。』
白哉の言葉が嬉しかったのか、咲夜は照れたように笑った。
そして二人は見つめ合っている。
「・・・ごほん。お前たち、ここがどこだか解っているか?二人の世界をつくるんじゃない。」


「そうだよ。そんな姿を僕らに見せつけないでよ。」
『ふふふ。すまない。つい、な。』
「あーあ、なんだか羨ましくなっちゃった。」
言いながら京楽は笑う。
[ prev / next ]
top
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -