蒼の瞳、紅の瞳
■ 9.ここだけの話

「咲ちゃん、綺麗だねぇ。」
盃を手に取りつつ、再び舞台に出てきた二人を見ながら京楽は言った。
「そうだな。見ろ、手まで繋いでいるぞ。」
浮竹もまた盃を手にしながらそう答えた。


「本当だ。・・・咲ちゃんの方が先に結婚するなんて思わなかったなぁ。」
「確かに。漣に先を越されるとはな。」
「しかも相手はあの朽木隊長だ。僕ら、彼のこと生まれたときから知っているのにね。」
「ははは。まったく、月日の流れが早いことだ。俺たちも年を取ったな。」
浮竹が苦笑する。


「咲ちゃんも僕らとそんなに変わらないはずなのにね。なんだか僕らばっかり老けていくねぇ。それを寂しいと思うのはやっぱり年のせいなのかねぇ?」
「ははは。そうだろうな。だが、漣が幸せそうでよかった。」
そういいつつも浮竹は寂しそうな目をしている。


「なんだい、浮竹。君もずいぶん寂しそうじゃないか。」
咲夜を見つめる浮竹をみた京楽がからかうように言った。
「いや、な。俺はなぁ、京楽。俺たちはずっと三人で居るものだと思って居たんだ。」
「そりゃあ、僕だってそう思っていたさ。」


「学院で出会って、それからずっと三人で居ただろう?漣が居なくなったりもしたが。」
「そうだねぇ。僕らはいつも三人だった。」
「それがなぁ、隣に居たのに急に遠くに行ってしまったようでな。なんというか、俺たちの漣だったのになぁ、と。そんなことを思ってな。」
盃に入った酒に映る浮竹の顔は寂しげだ。


「まぁね。僕もそう思ったよ。あーあ、寂しいねぇ。」
京楽は緋毛氈に寝ころびながら言う。
「こらこら、京楽。行儀が悪いぞ。」
「まぁ、いいじゃないの。今日は無礼講だよ。」
浮竹がそれをたしなめるも、京楽はそう言って意に介さない。


「・・・ここだけの話だけれどね。」
京楽は静かに話し始める。
「なんだい?」
「実は僕、咲ちゃんとお見合いの話があったんだよ。」


「えぇ!?」
浮竹の反応に京楽は苦笑する。
「いや、僕の家の人たちが勝手に見合い話を持ち掛けただけなんだけど。僕らが隊長になりたての頃だよ。」
「それで?」


「咲ちゃんがさ、怒ったんだ。」
「お前にか?」
「いや、勝手に僕の見合いを進めようとした人たちにだよ。「こういうことは本人の意思を無視していいものじゃないだろう」ってね。」
「漣らしいな。貴族の姫の発言とは思えない。」


「あはは。本当に貴族らしくないよね。政略結婚なんて貴族ではありふれた話なのにね。」
「そうだな。」
浮竹も身に覚えがあるのか同意する。
「でもねぇ、僕は嬉しかったよ。咲ちゃんは僕のために本気で怒ってくれる人なんだって。その時からかな。僕は咲ちゃんを大切にしていこうって決めたんだ。」
[ prev / next ]
top
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -