蒼の瞳、紅の瞳
■ 8.比翼連理

婚約発表から数か月後、尸魂界では大きな宴が催されていた。
なにせ、今日はあの朽木白哉と漣咲夜の結婚式である。
多くの賓客から祝辞を述べられ、相手に粗相の無いように対応するのは咲夜にとって大変な苦労であった。
・・・何故貴族はこうも決まりごとが多いのだろうか。


『ふぅ。』
「疲れたか?」
休憩のために舞台袖に引っ込んでから咲夜はため息をついた。
それに気が付いた白哉はそう尋ねる。


『まぁね。これまで貴族とはあまり付き合ってこなかったからな。君や夜一さん、浮竹に京楽は私がどう振る舞おうと気にはしなかったし。』
「これが普通なのだ。」
『そうみたいだな。しかし、なんでこんなに人が多いんだ・・・?』
咲夜はげんなりと挨拶をするために並んでいる貴族たちを見やった。


「我が朽木家は四大貴族。これを機に我が朽木家とつながりを持とうと目論んでおるのだろう。もちろん漣家ともな。」
『ははは。朽木家程ではないにしろ、漣家がそう簡単に手を組むことなどありはしないぞ。』


「それにしても・・・。」
白哉はまじまじと咲夜を見つめる。
『なんだ?』
「いや、よく似合っている。」
白哉は照れたようにそう言った。


『当然だ。君が私のために選んで作らせたものを、着ているのだからな。』
咲夜が着ているのは白哉が吟味し、布からこだわって作り上げられた一点物の白無垢だ。
恐らく、これを売れば屋敷がいくつも建つことだろう。
「死覇装の黒もいいが、この白もいいな。私の目に狂いはなかったようだ。」
満足そうな白哉をみて咲夜も嬉しくなる。


『ふふふ。・・・君は最近よく表情が変わるようになった。』
「・・・そうか?」
『あぁ。ルキアもそう言っていた。「兄様の表情が柔らかくなった」ってね。』
「そうか。・・・それはそなたのおかげだな。」
そう言って白哉は咲夜の頬に手を伸ばす。


『そうなのか?』
「あぁ。実をいうと、私はもう誰かを愛することはないと思って居た。緋真以外の者を愛するなど、考えたこともなかった。」
そういうと白哉は目を伏せた。
『そうか。』
咲夜は頬に添えられた白哉の手に自らの手を重ねる。


「緋真が死んでから、私の世界は色褪せたようだった。ルキアや黒崎一護との出会いによって徐々に色を取り戻してはいたが。だが、そなたが姿を見せたときから急速に世界が鮮やかになっていったのだ。世界が色づき、花や空がそれまで以上に美しく思えた。」
『そうか。それは嬉しいな。』
「礼を言う。」


『ふふふ。礼を言うのはこちらの方だ。私はね、誰かを好きになるなんて考えたこともなかったんだ。いや、違うな。特別をつくるのが怖かった。自分が自分で居られなくなるような気がしてね。だから、一人でもいいと思って居た。愛だの恋だの、私には不要なことだと思って居た。でも、君がそうではないと教えてくれたのだ。・・・私だって、この世界がこんなに美しかったなんて思いもしなかった。ありがとう、白哉。』
咲夜はそう言ってほほ笑む。


「・・・愛している。」
伏せていた目を真っ直ぐに咲夜に向け白哉はそう言った。
『知っているさ。君は私を全身で愛してくれている。私にはそれが感じられる。そして、それを信じられる。こんなに幸せなことはない。私も君を愛しているよ。』
「知っている。」


『笑って、泣いて、時には喧嘩もして、すべてのことを分け合っていこう。比翼連理というやつだな。』
「あぁ。共にあろう。私たちは夫婦なのだから。」
そしてまた、二人は微笑みあった。


『さて、そろそろ戻らねばな。皆が待ちくたびれている。』
「そのようだ。」
二人はそう言って手をつないだまま、再び舞台上へ戻ったのだった。
[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -