蒼の瞳、紅の瞳
■ 6.想いが通じるとき

イヅルに閉め出された咲夜と白哉はしばらく呆然としていた。


やられた。
これは完全にイヅルの策略だ。
白哉が来ていることに気付いていたんだ。
だからわざわざあんな質問をしたんだ。


我に返った咲夜はそう思った。
そして、今の状況に居たたまれなくなったのか、逃げようとする。
「・・・咲夜。」
しかし、白哉に名前を呼ばれると、動けなくなってしまう。


『な、なに?』
「来い。」
白哉はそういうと、咲夜の腕をつかんで歩き出した。
『え?ちょっと!?どこに行くんだ!?』
咲夜は腕を振りほどこうとするが、びくともしない。


「・・・邸にもどる。」
『は?今仕事中・・・。』
「構わぬ。」
『でも・・・。』
「構わぬといっている。しばらく黙っておれ。」
『うわぁ!?』
白哉はそういうと、咲夜を抱き上げて、瞬歩で朽木邸に向かったのだった。


朽木家に着くと、主の突然の帰宅に屋敷中が慌ただしくなったが、白哉は人払いを命じると、それに構うことなく私室へと向かい、中に入ってから漸く咲夜を降ろしたのだった。
「・・・先ほどの言葉は本当か?」
『びゃく、や?』
咲夜は白哉の様子に戸惑う。


また、あの瞳だ。
「先ほどの言葉は本当かと聞いている。」
『・・・。』
白哉の問いに咲夜は俯いてしまった。
「咲夜。」


あぁ、もう。
ずるいじゃないか。
そんな甘い声で私を呼ぶなんて。
気付いてしまえば、彼の声は酷く甘い。


『・・・すきだ。』
咲夜は俯いたまま、小さな声で呟いた。
すると、息が詰まりそうなくらいきつく抱きしめられる。
『びゃ、くや?』
「・・・好きだ。」
咲夜の声が聞こえていないのか、白哉は耳元でそう囁いた。


『・・・私も。私もだよ、白哉。』
その言葉とともに咲夜は白哉の背中に手を回した。
そして、そっと彼の羽織を掴む。
「・・・本当か?」
白哉の不安そうな声。


『ふふふ。ねぇ、白哉。顔を見せてくれ。』
咲夜がそういうと、腕が緩められる。
そして、至近距離で視線が交わった。
瞳が揺れている。
咲夜は彼の頬に手を添えた。


『私は、白哉が好きだ。』
そして目をそらすことなくそう伝える。
どうか、伝わりますように。
思いが届きますように。
そんな願いを込めて。


すると、白哉は嬉しそうに、甘さを含んだ瞳で、花が綻ぶように微笑んだ。
その微笑みは咲夜が今までにみたどの微笑みよりも、それは綺麗なものだった。
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