蒼の瞳、紅の瞳
■ 5.後はお二人でどうぞ

「さて、咲夜さん。貴女は一体だれが好きなんですか?」
『誰って・・・。何で君そんなに楽しそうなんだ?』
「ふふふ。咲夜さんに恋愛相談されるなんて、光栄だからですよ。で、誰が好きなんです?」


咲夜さんは僕の質問に目を泳がせる。
まだ、朽木隊長の霊圧には気が付いていないようだ。
それほど動揺しているらしい。
『・・・言わなきゃ、ダメか?』
「えぇ。大体の予想はついていますけどね。」


咲夜さんが子犬のようだ。
・・・すごく楽しい。
こんな姿を見られるなんて、貴重だ。
『・・・白哉だ。』
やっぱり。
「朽木隊長が、どうなんですか?」
『・・・好きなんだ。』


朽木隊長の霊圧が扉の前に来た。
声が聞こえているのかすぐに扉を開ける気配がない。
「誰のことが好きなのか、もう一度言ってみてくださいよ。」
そう笑顔で言ってみる。
もちろんその笑顔が意地悪なものになっている自覚はある。


『あーもう!!私は白哉が好きなんだ!!』
やけくそになったのか、咲夜さんの声が大きくなる。
ついでに顔も真っ赤だ。
面白い。
なんというか、役得だ。


「・・・だそうですよ、朽木隊長。」
『へ?』
驚く咲夜をよそに、イヅルはそう言うとおもむろに立ち上がって、扉を開いた。


するとそこには、目を見開き、若干赤みを帯びた顔を隠すように口元に手を添えている白哉の姿があった。
こんな朽木隊長の姿も貴重だなぁ、とイヅルは思う。
咲夜は赤い顔のまま、動きを止めていた。


「さて、僕は仕事にもどります。朽木隊長、その書類は三番隊宛ですね。僕が預かります。」
イヅルはそう言って白哉の手から書類を預かる。
「ほかに何か用はありますか?」
「・・・いや、ない。」


「そうですか。さぁ、咲夜さん。僕の昼休みはもう終わりです。なんせ書類がこんなにあるんですからね。」
イヅルは積まれた書類を見ながらそう言った。
『あ、あぁ。そうだな。』
「あぁもう、何止まっているんですか。僕は仕事に戻ると言ったでしょう。早く出て行ってください。」


イヅルはそう言って咲夜の腕をつかみ部屋の外へだすと、扉を閉めてしまった。
「ふぅ。まったく、手のかかる人たちだ。」
暫くは咲夜さんとのお昼ご飯はお預けかな。
もしかしたら、もう一緒に食べられないかもしれない。
でも、咲夜さんが幸せならそれでいいか。


というか、咲夜さんを幸せにできるような男など、朽木隊長ぐらいなのだろう。
京楽隊長や、浮竹隊長でもなく。
だって、咲夜さんは気が付いていないのかもしれないけれど、朽木隊長の話をするときの瞳の輝きや表情が普段よりも鮮やかなのだ。


咲夜さんから聞く朽木隊長もまた、いつもの厳しさなど感じられない。
きっと、お互いに弱い部分を見せることが出来る相手なのだろう。
咲夜さんは朽木隊長に、朽木隊長は咲夜さんに、甘えているのだろうなぁ。
イヅルはそんなことを思いながら机に向かったのだった。
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