蒼の瞳、紅の瞳
■ 28.溢れた想い

『ふふふ。』
咲夜は突然笑い出す。
「・・・なんだ。」
『白哉は、優しいね。』
「何がだ。」


『だって、くだらない文一つで私のために怒ってくれるし。今日みたいな私のお遊びにも付き合ってくれるし。』
「当たり前だ。」
『そうそう、それを当たり前って言えるところとか、我が儘だけど欲がないところとか。』
「それは褒めているのか?」


欲がない?
目の前にいる彼女が欲しくて仕方がないというのに?
『褒めているよ?それは、君のとてもいいところだよ。私は君のそういうところに助けられている。今も昔も。』
「そうなのか?」
『うん。だから私は君がそばに居ると安心するよ。いつも、ありがとう、白哉。』


そういって笑顔をみせる。
それが、あまりにも柔らかくて、優しい笑顔だったから。
いつものような悪戯な笑みではなかったから。
息が詰まって、もうどうしようもなくなって。
白哉は思わず咲夜を抱きしめてしまった。


『うわ!?白哉?どうしたんだい?』
彼女の温もり。
彼女の匂い。
彼女の声。
彼女のすべてが私の心を揺さぶる。
「・・・。」
『白哉・・・?』


「・・・好きだ。」
思いが溢れだしてしまった。
あぁ、もっとあとで伝えるつもりだったのに。
何年、何十年かけて手に入れる覚悟であったのに。
そんな笑顔を見せられたら。


『・・・え?』
「好きだと言ったのだ。」
一度溢れ出してしまうと、もう止めることが出来なかった。
『びゃく、や?』


咲夜は白哉の言葉に混乱していた。
なんで、とか。
どうして、とか。
いつから、とか。
君は緋真さんを愛していたのではないの、とか。
色々な思いがかけめぐる。
「好きなのだ。」
腕を緩められて、目が合う。


その瞳は私が知るものではなくて。
急に、白哉が知らない人のように思えた。
いつから、こんな瞳をするようになったのだろう。
こんな瞳を私は知らない。
こんな・・・甘い瞳は知らない。
さっきまではいつもの可愛い白哉だったのに。
今目の前に居るのは、一人の男で。
咲夜は、動くことが出来なかった。
初めて白哉を怖いと思った。


反応の無い咲夜に不安になったのか、白哉は咲夜の肩に顔をうずめた。
「好きだ。好きなのだ。・・・貴女を、愛している。」
そして聞こえてきたのは切なさを含んだ愛の囁きだった。
『びゃくや?』
「嫌か?」


『いや、じゃない、けど。でも・・・私たちは従姉弟だよ。』
「それが何だというのだ。」
『だって、そんなこと、考えたこともなかった。』
「では、これから考えてくれるか?」
『・・・うん。』


「そうか。・・・咲夜と呼んでもいいだろうか?」
『あ、あぁ構わない。』
「咲夜。」
そう言って白哉が嬉しそうに微笑んだような気配がして、また私は動けなくなってしまったのだった。



2016.03.31 復帰編 完
〜自覚編に続く〜

中途半端なところで切れてしまいましたね・・・。
でも漸く恋愛要素が出せました。
自覚編は糖分多めと思われます。

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