蒼の瞳、紅の瞳
■ 25.八人目

咲夜は隊主室の扉を叩いた。
「・・・入れ。」
『失礼しまーす。』
咲夜が部屋に入るとそこには書類整理をする冬獅郎が居た。
「・・・なんだ。」


あらら。
本当に不機嫌。
眉間に寄せられた皺がいつもの三倍ほどになっている。
本当に苦労性な隊長だなぁ、冬獅郎は。
苦笑しながらさりげなく彼に近づいていく。
まだ腕輪がついていることを確認して内心ほくそ笑んだ。


『君、追いかけっこの最中だってこと忘れてないかい?』
「あぁ、そうだったな。」
『逃げなくていいのかい?私は君を捕まえに来たのだけれど。』
「・・・それを早く言え!!」
冬獅郎はそういうと同時にひらりと窓から外に逃げて行った。


『ふふふ。そう来なくっちゃ。詰まらないよねぇ。』
咲夜も遅れることなくそれに続く。
『ほら、冬獅郎、それで私から逃げられると思うのかい?』
「ちっ。縛道の四、這縄。」
『そんなものが私に届くと思うのかい?』


「思ってねぇよ。だいたいなぁ、お前が平の隊士のポジションに居るのはおかしいだろ!!隊長たちだってお前と戦うのは命がけだろうが!!破道の三十一、赤火砲。」
流石隊長だ。
今までの人たちとは鬼道の威力もスピードも違う。
この子もまだまだ伸びるな。


『やだなぁ。私は、今はただの平隊員さ。』
「今は、だろ!!元十番隊副隊長が何いってんだよ。」
『いやぁ、瞬歩が早くなったねぇ。先生は嬉しいよ。』
「話を逸らすな!!つか、余裕でついて来てんじゃねぇか!!」
『ほらほら、捕まえちゃうぞー。縛道の六十一、六杖光牢。』


「危ねぇっつの。」
冬獅郎が鬼道をひらりと避ける。
『破道の四、白雷。』
咲夜は白雷を連発する。
「そんなものくらうか。」
右に左に冬獅郎はすべての鬼道を避ける。


『うーん、早いなぁ。やっぱり小さいと身軽だねぇ。早くて的が小さいとはなかなか厄介だ。』
「小さいのは関係ないだろうが!!破道の三十三、蒼火墜。」
小さいという言葉に反応して冬獅郎が咲夜に攻撃してくる。
『おっと、危ないなぁ。・・・って、え?』
咲夜の足が何かに絡め取られたようになる。


「はぁ。かかったな。さすがに気が付かなかったか。」
『そうか、伏火を曲光で隠していたのか。やたらと左右に動いていたのはこのためか。』
「そうだ。動くついでに網目状に張っておいた。さて、じゃあな。」


そう言って冬獅郎が背を向けようとしたとき、
『破道の三十一、赤火砲。』
咲夜は自らをとらえている霊糸の網に鬼道を放った。
「!!馬鹿か!!」
それに気が付いた冬獅郎は瞬歩で近づき、咲夜の鬼道が着火する前に相殺した。
「ったく、自分を燃やす気かよ。」


『・・・ふふふ。かかったな。縛道の六十三、鎖条鎖縛。』
「!!しまっ!!」
咲夜はすかさず、近づいてきた冬獅郎を捕まえた。
『捕まえた!!』
「・・・人の良心に漬け込むなんてありかよ。」


『ふふふ。君なら助けてくれると思ったよ。まぁ、こんなもの私には簡単にほどくことができるのだけれど。・・・解。』
咲夜はそう言って自分をとらえている鬼道を解いた。
「ズルいだろ、それ・・・。」
『まぁ、さすがに隊長だ。なかなか楽しかったよ。またな。あんまり副官をいじめるなよ。』
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