Clap



眼鏡@
お相手は白哉さん。




『・・・ん・・・ん?』
穏やかな昼下がり。
書類整理も終わり、急な任務に呼び出されることもなく。
隊士たちも皆が穏やかな様子だったから、私も釣られてしまったらしい。


『・・・しまった。寝ていたか。』
呟いて、ぼやける視界の中でいつものように眼鏡を探して机の上に手を滑らせる。
居眠りの時でさえ、無意識に眼鏡を外して眠る自分に内心苦笑した。
しかし、机の上には眼鏡らしきものがなく。


「よく寝ていたな。」
突如横から聞こえてきた声に身体を飛び上がらせると、視界がはっきりとして。
恐る恐る横を向けば、そこには己の幼馴染み兼上司の姿があった。
どうやら彼が眼鏡を掛けてくれたらしい。


『び、白哉・・・。』
「この私の目の前で居眠りとは、良い度胸をしているな。」
『いや、その、つい・・・面目ない・・・。』
言って目の前の男に素直に頭を下げれば、喉の奥で笑う気配がした。


「仕事は終わっている故、今日の所は良しとしてやる。」
『流石白哉様。その広きお心に大変感謝いたします。』
今度は恭しく頭を下げれば、鼻で笑われたのだが。
何にしろ、お怒りでないようで胸を撫でおろした。


「しかし・・・そなた、相変わらず目が悪いようだな。」
『まぁね。銀蜻蛉ではこれ以上の矯正は出来ないと言われた。』
「それ以上悪くなったらどうするのだ?」
『技局に作ってもらうか、四番隊に眼の手術をお願いするかのどちらかだな。』


「そなたであれば、中央施薬院での治療も受けられるだろう。」
『あそこに行くと必ず面倒な爺どもに出会うから嫌だ。』
「だが、その様子では眼鏡がなくては業務に支障がでるぞ。」
『まぁねぇ・・・。』


でも、目が良くなったら任務に行かされるんだよなぁ・・・。
内心で呟けば、白哉の視線が鋭くなったような。
慌てて視線を逸らすと、顎を掴まれて易々と視線を合わせられる。
何かを探るように覗き込んでくるその瞳に、何故かどきりとした。


「・・・・・・まぁ、いずれにしろ、眼鏡は掛けたままにしておけ。」
『へ?』
「眠っている時はともかく、その瞳に惑わされる者は多い。」
『どういうことだ?』


「そなたからは見えなくても、相手からはよく見えるということだ。」
なぞなぞのような言葉に首を傾げていると、白哉はすいと目を逸らす。
「深く考えずに用心しておけ。」
『・・・つまり、私は眼鏡がないと何もできないと言っているのだな?』


「・・・・・・そうは言っておらぬ。」
『いや、その妙な間は怪しい!絶対に私のことを莫迦にしている!』
「日頃からそなたのことは莫迦だと思っているが、そういうことではない。」
『莫迦とはなんだ、莫迦とは!しかも日頃からだと!?』


「落ち着け。そなたの莫迦が露呈しては困る。」
『だから!その莫迦呼ばわりはやめろ!』
「莫迦に莫迦と言って何が悪い。」
『何だと!?』


子どものような喧嘩が始まって、隊士たちは苦笑する。
己の隊長の言葉の意味を理解していない彼女に対して。
そんな彼女に溜息を吐きつつ何かと気を配る己の隊長に対して。
何はともあれ、今日の六番隊は平和だと思いながら。




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