「杉田さん…っ!ゆきちゃんが‥、ゆきちゃんが交通事故で病院に運ばれたって…今連絡がっ…!」
「………え…?」

 それはあまりにも突然すぎて、この時はまだ理解出来てなかった。



 俺はいつもの様に朝スタジオに来ていて、いつもの様に出会うはずだった恋人のゆきを待っていた。
 今日はラジオの収録日。
 しかし収録開始時刻になっても彼女の姿はなかった。
 いつも一緒に来ているはずのゆきのマネージャーも来ていない。
 一瞬嫌な予感はした。
 でも一瞬だけでそれからは考えないようにしていたんだ。
 まさか本当にこんなことになるなんて思いもしなかった。
 SP田中こと梶がスタッフに聞いたらしく血相を変えて言いに来た。

「早く病院に行ってあげて下さい…っ!これ、ゆきちゃんが運ばれた病院の名前と連絡先っす!」
「……え…っ、……何…?」

 わけがわからない俺は梶から受け取った紙を、ただ呆然と見るしかない。
 そんな俺に苛立ちを覚えたのか、梶は俺に近付き怒鳴ってきた。

「杉田さんっ!!何ボーっとしてんですか!?早く行けって!!」

 その声に周りのスタッフ達も驚いてこちらを見ていた。
 最初は冗談かと思っていた。
 でもあまりにも真剣で本気な顔をしている梶を見て、本当なんだと気付いてしまった。

「──っ!……行ってくる…っ!」

 梶の怒鳴り声で我に返った俺はそう告げると、スタジオを飛び出しタクシーでゆきが運ばれた病院へと向かう。
 どうやってタクシーに乗り込んだのか…どうやって行き先の病院を伝えたのか…お金を払ったのか…病院に着いてからどうやってゆきのいる病室にたどり着いたのか…何も覚えてない。
 ただ気が付くと俺は彼女の手を握って泣いていた。

 交通事故の原因は、相手車の前方不注意だったらしい。
 ゆきとマネージャーが乗っていた車が信号待ちで停車しているところに、後ろから追突──。
 幸いマネージャーは軽い鞭打ちだけで済んだようだが、ゆきは後座席に乗っていたため強い衝撃を受け、その衝動で頭を強く打ってしまったらしい。
 外傷は酷くないが、頭の衝撃でまだ目を覚ましていない。
 命に別状はないとはいえ、このまま目を覚まさないかもしれないと医者に言われた時は、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。

「ゆき…。」
「……ゆき…?俺だよ…、わかるか…?」

 見た目はただ普通に。
 気持ち良さそうに眠っているだけ。
 いつもならすぐに起きてくれる。
 起きて眠たそうな声で「杉田さん」って呼んで笑ってくれる。
 でも今のゆきはいくら呼び掛けても目を覚ましてくれない。

「ゆき…。」
「……ゆき…っ。」

 病室に着いてから、俺はずっとゆきの手を握り名前を呼び続けていた。
 ゆきがいつ目覚めてもいいように.........。

なぁ?ゆき。
俺の声聞こえてる?
なぁ?ゆき。
今どんな夢見てる?
なぁ?
俺はずっとそばにいるから。
早く戻っておいで。
ゆき.........。
俺の名前を呼んでくれ──。





end.





 あとがき

 わかってるよ、わかってる!中途半端で終わってますよね。タイトルは「眠り姫」…ええ、ずっと眠っていた作品を引っ張り出してきましたよ。だってさ…今はこれしかないんだもん…っ(涙目
 杉田さんのプロポーズ篇…一生懸命書いたのに消えてるとか…ね。ないよね。ないない。
 なのでこんな感じになっちゃいました。すいまっせーん(土下座っ


20210405 修正



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