/ 徹夜

『スケベ・・・』
「スケベで結構」

そう言って安室は名前の耳に噛み付いた。

『ぁっ・・ちょっと!』
「昨日仕事が大変だったんだ、だからその充電を」

噛んだり舐めたりの連続で、耳だけでなく首筋や鎖骨辺りまでキスをおとしていく。
少しよれたTシャツを今日に限って着てしまったことを名前は後悔した。

『お客さん、来ちゃいますよ・・ッ』

名前の言葉を塞ぐように、安室は唇を重ねると次第にねっとりと舌を侵入させる。
文句を言いながらも拒否しない名前をいいように、腰へと腕を回すと自分の方へと抱き寄せた。
静かな店内で甘い声が漏れる。

『いい加減にッ・・・』

名前が安室を突き放そうとしたそのとき、丁度店のドアに付けられたベルが鳴った。

「いらっしゃいませ〜!」

サラリーマンの入店に、笑顔で挨拶すると何事も無かったかのように席へと案内をする安室。
名前は乱れた呼吸を整えるように大きく深呼吸し、赤くなった顔を客には見せまいと作業に取りかかった。

「ブレンド一つお願いします!」
『・・・はい』

ニッコリといつもの営業スマイルを見せる彼だったが、目の下のクマを見つけ名前は小さく息を吐いた。徹夜コースの日は何かとスキンシップが多い気がする。自我を保てていない、みたいな・・・。完璧な安室さんのそういった姿を見るのは貴重だし寧ろ嬉しいものではあるけれど、時と場合によっては心臓が持たない・・!

『昨日徹夜しました?変わりますよ』
「いいんですか?とても助かります」

すいません、と申し訳なさそうに頭を下げる安室に、名前胸を叩いた。

『いつもお疲れ様です』

お巡りさんの仕事をしながら喫茶店でバイトをしている。どんな警察の仕事をしているのか?だとか、なぜ掛け持ちしているのか?といった詳しいことまでは知らないけど、彼が警察であるという予感はしていた。
周りにはその顔を隠しているみたいで公にはしてないみたいだけど、なんでも探偵の仕事もこなしているみたいだから、隠していた方が都合がいい・・・とかかな?
それで徹夜という日もちょくちょくあるみたいだ。

「お疲れ様です、今日はありがとうございました』
『早く帰って寝るように。疲れ様でした』

彼に向けて敬礼して見せると、頭にチョップが降りてくる。全然痛みなど感じない。優しさがいっぱい詰まったチョップだ。

「それじゃあお言葉に甘えて。お疲れ様でした」

そう言ってさりげなくキスをしていくと、ポアロを出ていった。
ふ、不意打ち・・・・!

『ずるい・・・』

物足りないなんて思ってしまう自分を押し殺して、自分も帰宅の準備を素早く済ませると店を出た。
いつもよりエッチな彼も、たまには新鮮なものだ。



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