ある日の昼寝



(ゾロ視点)


俺は暇さえあれば鍛練するなり体力温存の為に昼寝するなりするんだが…。最近、その昼寝に先客が居るようになった。


「…またお前か」
「ん?なんだ、ゾロも昼寝か?」


前足の上に乗せた頭を持ち上げることも瞼を持ち上げることもせず、名前はそう言った。“見る”ことをする代わりに、鼻と耳が小さく揺れる。匂いと音から近付いて来たのが俺だと判断したらしい名前は、気呆そうに欠伸を一つ零した。あー、人の欠伸見るとこっちまでしたくなんだよな。


「くあっ」
「変な欠伸」
「…っせえ。余計なお世話だ」


片目だけ開けてこっちを見ていた名前を一睨みして、その隣にどかりと座った。いつもと同じように頭の後ろに腕を回して適当な所へもたれ掛かり、目を瞑る。けど、一つ気になることがあって閉じた目はまたすぐに開いた。


「そーいやお前、なんで昼寝ん時はその格好なんだ?」


その格好というのは獣型のチーターの姿のことだ。別に人型でも困ることなんてねえはずなのに、何故か昼寝の時は決まってチーターの姿でいる。

名前はゆっくりとした動作で頭を持ち上げ、何か考えるように視線を斜め上へ流しながらこう答えた。


「それはまあ、あれだ。気分の問題ってやつ」


そう言った名前の顔は至って真面目なもので、その表情のままこれで満足か?と首を傾げられる。

ああ、たしかに気分ってのは大事だな。

俺もまた名前と同じように視線を斜め上へ流しながら考える。そこで思い付いたのはちょっとした悪戯みてえなもんだ。特に深い意味はない。





「…ゾロ、重い」
「ああ?気のせいだろ」
「んな訳ねえだろ。人を枕代わりにすんな」


寝そべっていた名前の背に頭を乗せて、再び寝る体勢に入る。名前の背から響くように聞こえる声は若干不機嫌そうなものだったがまあ、今更そんなもん気にしねえ。


「いつも座って寝てる癖に…」
「気分の問題だ」
「…気分の問題か」
「ああ」


なら仕方ねえなと笑った名前の声が、妙に心地よかったのはたぶん、気のせいだ。




ある日の昼寝


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