ハロウィン3
薄暗い倉庫。隣からは噛み殺したような笑い声が聞こえる。
「シシシ、あいつら驚くかな?」
「驚くだろ。二人ともビビりだし」
その笑いに釣られるように、俺の口端も自然と吊り上がった。灯りもない中、顔を突き合わせてニヤリと笑う。ふふ、ルフィも結構イイ性格してるよな。
かつん、かつん。
不意に扉の向こうから誰かの足音が聞こえて、俺とルフィは口の前で人差し指を立てた。そして二人でにんまりと笑う。
「おーい、ルフィー、名前ー。居るんだろー?」
「ルフィ達の話ってなんだろな。ウソップは分かるか?」
「さあ。俺は心当たりねえけど…」
ウソップとチョッパーの声だ。二人が持ってきたらしいランプの灯りで部屋が明るくなった。俺達はもちろん、名前を呼ばれても返事はしない。代わりに、ルフィは腕を伸ばして俺達が居る位置より離れた所の壁を叩いた。
ドンドンドン。
ルフィは数回音を立てたところで腕を引っ込め、また二人で聞き耳を立てる。
「るるるルフィだよな?今の!」
「名前!?いるんなら出てきてくれよお…!」
右に左にと揺れる灯り。どうやら二人は俺達の姿を探しているようだ。さっきまでは普段通りだった声色がちょっと震えてきてる。あ、おいルフィ笑うなよ?俺まで笑いたくなるだろが。
こっそり物陰から盗み見てみたら、やっぱり二人は身を寄せ合って怯えてた。ぶふっ、思わず吹き出しそうになったのは反射的に手で押さえる。隣に居るルフィに視線を戻したら、眉間に皺を寄せながら「しーっ」と言われてしまった。わりい、わりい。
さて、気を取り直して…。俺は人型から獣型に姿を変えていつもはめている革手袋を外した。実はチーターの爪は普段から半分くらい出たまんま。スパイクの役割してるから引っ込められねえんだ。その爪をシャキン、と全部出して床に突き立てた。
ガリガリガリ。
ちょうど猫が爪研ぎをするみたいに床を引っ掻く。次いでルフィがまたドンドンドン、と壁を叩く。
「なななな!?」
「何かいるううう!!」
向こうから聞こえる二人の悲鳴に、ついつい我慢できなくて吹き出してしまった俺。今度はルフィも笑っていたのでおあいこだ。一頻り音を立てたところでルフィに目線で合図し、自慢の俊足でウソップ達の背後へと回り込む。ルフィも物音を立てるのを止め、さっきよりもウソップ達に近い位置に隠れた。
急に物音が止んで気が抜けてしまったらしいウソップとチョッパー。キョロキョロと目線を動かすも、当然そこに俺達はいない。
そして、俺はウソップの手に握られたランプの火を吹き消した。
「「〜〜〜〜!!」」
途端に声にならない悲鳴を上げる二人。あらかじめ目を瞑って暗闇に備えていたルフィもウソップ達の背後に回り込み、静かに掛け声を掛け合った。
((せーの…))
「「うわあああ!!!」」
「「ギャアアアアア!!!」」
その時の二人の悲鳴はゾロの鍛練部屋まで聞こえたとか聞こえなかったとか。
…後でナミに煩いとこっぴどく叱られたのはまた別の話。
暗闇で遊ぶ子供達
名前!またやろうなー!
今怒られたばっかだろ…