彼女はいつでも突然で



「智里くん!頼みがあるの!」
「やだ!絶対やだ!」
「一緒にライオコット島に来て!」
「あーあーあー!聞こえません何も聞こえません全くこれっぽっちもなーんにも聞こえませーん!!」
「大丈夫!もう夏未さんにお願いして許可とチケットは用意してもらったから!」
「はあ!?何それ全然大丈夫じゃない!」
「やっぱり聞こえてるじゃない」
「あ」






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「と、いうわけで彼がこれからイナズマジャパンの専属カメラマンを務める館林智里くんです!」
「はじめまして館林智里です。雷門中一年、ただの写真部で得意なのは風景写真です。春奈がまだ新聞部だった時からこき使われてます。よろしくお願いします」


春奈から話があった翌日、つまり今日には飛行機に乗せられてライオコット島に来ました。選手は専用のチャーター機?だったので、俺は一般用の別便で。目的はイナズマジャパンの撮影。練習風景の写真をメインに、オフショットとかいろいろ撮ってくれと。

プロ呼べば良いじゃん!日本代表なんだからそれくらい贅沢したって良いじゃん!って反論したけど、それだとロイヤリティ、つまり著作権がどうのこうので勝手が悪いし、校内新聞でも使いたいし、部活動の一環ってことにすればほら、都合がいいし。と流されて終わった。じゃあせめて先輩から選んでくださいって言ったら音無さんの推薦だからの一言でぶった切られた。終わった。もう俺に反論の余地はなかった。


「カメラマンがいるからといってお前たちが特別なことをする必要はどこにもない。いないものと思って練習に取り組め」
「監督!もう少し言い方ってものがあるんじゃないですか!?」
「いや、俺もそれくらいの方が気が楽」
「智里くんまで!」


監督と俺の言葉にぷんすこ怒り出す春奈には悪いが、本当にそれくらいの扱いの方がありがたい。というか俺のせいで練習に支障が出たりしたら怖いじゃん!俺だって別に邪魔したいわけじゃないんだから!

…という心の叫びも虚しく、監督はさらに棘のある言葉を続けた。


「試合中もゴールネット裏にはカメラマンが何人もいる。この程度のことでプレーに支障が生じるような奴はスタメンから外していくから、そのつもりでいろ」


ぴしり、ぴしり。凍る空気に割れる怒りの音。あー…やだよー…俺、こんなおっかない所でやってく自信ない…。




彼女はいつでも突然で

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