嫌な夢を見た。背中が汗びっしょりで、パンツまでびっしょりだった(別に変な意味ではなく)。妙にリアルだったから、正夢になるんじゃないかって怖くなった。いやいやまさか、俺超能力者じゃないし。

とりあえず、この汗だくになったTシャツを着替えようとクローゼットを開ける。いや、やっぱり風呂に入…る時間はないか。朝練に間に合わなくなる。仕方ない。俺は青と黄色のジャージに袖を通した。

下で朝御飯よ、と母さんが呼ぶ声がする。はーいと間延びした声を返して、充電器に繋いだままのケータイをポケットに突っ込んだ。くしゃり。何かが潰れる音。あれ?と思ってケータイを引っ張り出す。





私の十の願いを叶えてください。

代わりに貴方の願いを一つ、叶えてあげましょう。






なんだ、これ。意味が分からない。誰の悪戯だ。母さんか、父さんか、妹…って線は薄いな。馬鹿みたいに綺麗な字だし。学校の誰かって線も薄い。洗濯されたようなあとがない。

母さんの急かすような声が聞こえて、慌てて部屋を飛び出した。握り締めていたはずの紙切れは、どこかに行ってしまった。

ああ、聞きそびれた。





願いの始まり


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