かまってかまって



最近、俺は食後の昼寝が出来なくなった。腹が膨れて、甲板に出て、チーターの格好になって、欠伸を一つ。ここまでは良い。


(どーせ今日も、)


あいつが邪魔しに来るに決まってる。

そう確信している俺はメインマストの下に伏せ、ラウンジの扉を睨み付ける。数秒後、俺の予想通りの人物…ルフィが扉を破らんばかりの勢いで飛び出して来た。


「ライ!かくれんぼするぞ!」
「やだ。俺は寝る」
「じゃあ起きるまで待つ!」


腕組みをして鼻息荒く言い切るルフィには悪いが、その言葉に説得力はない。なぜなら、ここんとこ毎日のようにこいつに邪魔されているからだ。三十分だけ待てって言っても聞かねえし、噛み付いても引っ掻いても聞かねえし…。


「…というわけだから、あんたは半径3メートル以内に近寄らないでくれ」
「よし!分かった!」
「…分かってねえだろ」


たしかにルフィの体は俺から数メートル離れた所にある。…けど、腕だけ伸びて体を持ち上げられた。

っとにコイツは屁理屈みてえなことばっかりしやがって…!


「離せ!!」
「うーん…」
「悩むな!!」
「ん、じゃあ離さねえ!」
「ってめ、ふざけんなよ…!!」
「俺は本気だ!!」


余計タチ悪いわ!!と叫んで身を捩る。容赦なく巻き付いてこようとした腕には容赦なく牙を剥き、弛んだ腕からなんとか逃れた。もちろん、甘噛みだから血は出てねえ。

ルフィは噛まれた腕を擦りながら、恨まし気に俺を睨む。


「…ライのケチ」
「うるせー。今日くらい昼寝させろ」


不機嫌そうに口を尖らせようが関係ない。ケチって言われても関係ない。俺はとにかく眠い。あーもー…今なら立ったまま寝れるぞ…。

重力に逆らえそうにない瞼を閉じ、俺はのそのそと体勢を整えた。軽く重ねた前足の上に頭を乗せて欠伸を噛み殺す。


「ライ?寝るのか?」
「…んー…」
「じゃあ俺が歌うたってやる!」


もういっそ全部無視してれば飽きて放っておいてくれるんじゃないか。…という俺の考えは甘かった。

ルフィの“歌をうたう”という言葉にさっと血の気が引く。だって、こいつの歌って言ったら…!


「ねこふんじゃっ」
「あ゙ー!!遊んでやるからその歌だけはやめろ!不吉過ぎる!!」
「お、ホントか?じゃあウソップとチョッパーも呼んでくるな!」


バタバタと、浮かれた足音を立ててラウンジに向かうルフィを見送り、溜め息を零す。

…そう、俺はここんとこ毎日のように“あの歌”を聴かされてきた。誰だよあんな不吉な歌作ったの…。安眠妨害で訴えるぞ。


「ライー!まずはお前が鬼だからなー!」
「あんたもいつか絶対訴える」




かまってかまって

噛み付かれる


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