同じ色


(サンジ視点)


水の流れる音、皿同士の当たる音。

飯を食い終わった後の食器を洗いながら、視界の端に映る金色をなんとなく眺めた。


「なあサンジ、これ終わったらホットミルク飲みたい」
「へいへい、クソネコはミルクがお好きなようで」
「うるせえ眉毛」
「作ってやらねえぞ」
「……」


俺が濯いだ皿を受け取り、布巾で拭いてまた隣へと積み上げていくライ。反論の言葉がねえからちらっと見てみたら、口だけ尖らせて不満げに手を動かしていた。

そしてふと、ライの小さな動きに合わせて揺れる髪に目が留まる。俺より少し色味の薄い金。同じ金髪だが、ライのはふわふわした猫っ毛。

視界を遮る自分の金髪をひとふさ摘まんで、それから隣で次の皿の催促をするライの髪に手を伸ばした。


「うお、やわらけっ」
「あ!てめえ濡れた手で触んな!」


触った途端にふわふわ浮いていた髪が潰れて、心なしか身長が縮んだ。いっつもふよふよしってから柔けえんだろうとは思ってたが…予想以上の猫っ毛だ。むしろ色からしてひよこみてえだな。

ライは濡れて潰れたのが気に食わないのか、乱暴に髪を混ぜて水気を払った。細かい毛束になって、へたっていた髪の毛が少し跳ねている。


「俺のは濡れたらすぐ潰れるけど、サンジはあんま変わんなさそうだよな」
「ああ?まあ、俺のは髪質が違うからな」
「ナミのほどじゃないけどサラサラしてる」
「生まれつきだ」
「ハゲるぞ」
「ハゲねえよ!」

まるで哀れむような目に思わず怒鳴る。なんだよ!別に髪が痛んでねえのはいいことじゃねえか!

ライの目が気に食わなかったから水で濡らした手でその髪を撫でつけてやった。俺はてっきり暴れるかと思ったんだが、意外にもライは大人しいまま。ここまで濡れてどうでも良くなったらしい。


「七三に分けてやるよ」
「オールバックの方がいい」
「へいへい」


垂れ下がった前髪を掻き上げ、後ろへ流す。その時に手の平を睫毛がくすぐって、そういやこいつは睫毛が長かったんだっけとどうでもいいことを考えた。

あーあ、洗い物やってただけのはずなんだがな。


「なんかでこがスースーして変な感じ」
「おら、遊ぶのはここまでにして残り片付けんぞ」
「へいへい」


本当に、口の減らねえクソネコだよ。




同じ色


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