冬島御一行



シキの手によって船から振り落とされ、ばらばらになってしまった麦わら海賊団。あいつの能力で空に浮かぶ島々はどうやらどれも違った気候を持つようで。

浮力を失って落ちる最中、俺の視界に映ったのは色とりどりの鮮やかな島ばかり。だけど、俺の体が吸い込まれるようにして引き寄せられたのは…。


「あぁああぁよりによって冬島かよおぉぉおぉ!!」


白一色の銀世界。島に近付くにつれ涙も凍りそうになる。やだ!俺寒いの嫌い!つーか苦手なんだってば!


「うるせえ。これくらいのことでガタガタ吐かすんじゃねえよ」
「ゾロ!?」
「あ゙ぁ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁぁ!!!」
「うお、チョッパーもか!」


平然とした面持ちで落下するゾロとは反対に、チョッパーは涙やらなんやらを流しながら落ちていく。…なんか不思議な面子だな。と、顔をしかめたのも束の間。

雪原はあっと言う間に近くなり、俺達三人は仲良く雪の上へと落下した。


「さっぶううう!!」
「心頭滅却すりゃ火もまた涼し。逆もまた然り」
「バカだろあんた!」


幸い、落ちたのは積もったばかりの新雪の上だったらしく、あの高さから落ちた割には大した痛みもなかった。

だけど寒い。とにかく寒い。

前に冬島に上陸した時と違い、防寒具なんてもんは一つも身に付けていない。こんなんじゃ死ぬとでも言わんばかりに雪から身を起こせば、平然とした顔のゾロと目があった。


「あのな、こんな所で平気なのはあんたとチョッパーくらい…って、」


ゾロを睨み、チョッパーの姿を探す。だけどすぐには見つからなくて、はたと視線が止まったのは雪から生えたちっちゃな蹄二本。そして、それに気付いたゾロが溜め息を吐く。


「おい、大丈夫かチョッパー」
「う、うう…ありがと」


突き出た足を掴んで引っ張り上げるゾロ。雪の中から顔を出したチョッパーは申し訳なさそうに眉尻を下げた。


「よーしチョッパーおいで。俺があっためてやろう」
「あっためてくれの間違いだろ」
「まあ、そうとも言う」
「?」


ゾロに下ろされ、雪の上に立ったチョッパーがこてん、と首を傾げる。いまいち良く分かってねえらしいな。

そんなチョッパーに向かって両手を広げると、意味が分からないながらもトテトテとこちらに寄ってくる。よーし良い子だ!抱き締めてやる!


「うがっ!ライ、ぐるじいぞ…!」
「おー、わりぃわりぃ」


大して悪びれた風もなくそう言えば、少し離れた所で見ていたゾロが呆れたように溜め息を吐いた。おい、なんだよその顔は。


「はあ…まあ良い。とにかく、この島出る方法探すぞ」
「はいよ」
「早く皆と合流してナミを助けに行こう!」
「そうだな。他の島に落ちた奴らのことも気になるし。でもその前に…」


そこでやせ我慢してる男を笑っても良いですか?って言ったらおもっくそぶん殴られた。

寒いなら寒いって言えば良いのによ!




冬島御一行

ゾロの奴、鳥肌立ってた


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