三人寄れば?



俺とルフィ、チョッパーの三人が横一列に並ぶ甲板の縁。垂らした糸は船が走るのに合わせて流れるだけ。獲物がかかる気配は微塵もない。

ちなみにいつもなら率先して釣りをやってるウソップは工場に出張中だ。なんか新しいルアー作るとか言ってた。


「…しっかし釣れねえなー」
「面白いくらいにな」
「ばっかだなーライは。釣りは釣れるから面白えんだぞ?釣れない時は“つまらない”だ!」
「…もう何でも良い」
「でもこれ釣らないと今日の分の飯抜きだぞ?」
「あんたらで釣ってくれ」


俺は眠い、と言って欠伸を噛み殺す。もう何時間この状態でいるんだか。船は順調に波を掻き分けて進むが、俺達の運やら何やらは数十km前の海底にでも落として来たらしい。だってアタリすらこない。

そんなことを考えてまた欠伸を噛み殺した時、左隣で糸を垂らしていたチョッパーが声を上げた。


「あ!」
「掛かったのか!?」
「大物かあ!?」
「ちがう」
「「なんだ…」」


てっきり魚が掛かったのかと思って喜んだ俺とルフィ。ぬか喜びだったけど。

浮かした腰をもう一度落ち着け、ぼんやりと水平線を眺める。ルフィは拗ねたように口を尖らせた。


「じゃあさっきの“あ!”は何だったんだよチョッパー」
「おれな!気づいたんだ!」
「何に?」


ルフィの問いにチョッパーはどこか嬉しそうに答える。俺が続けて何に?と聞けば、俺とルフィの顔を交互に見てまた嬉しそうに笑った。


「おれたち三人とも悪魔の実の能力者なんだ!」


ああ、なるほど、と俺は右隣にいたルフィと顔を見合わせる。チョッパーは三人の共通点を見つけたことが嬉しかったらしい。

さっきまで退屈そうに顔をしかめていたのに、今は鼻歌でも歌い出しそうな勢いだ。それにくすりと笑って前を向き直す。


「そうだな、俺達三人とも能力者だ。俺はネコネコの実のチーター人間」
「俺はゴムゴムの実を食った!」
「お、おれはヒトヒトの実だぞ!」

「つまり、三人ともカナヅチだ」
「「あ」」


両隣のルフィとチョッパーが、今更思い出したように目を見開いて俺を見た。こいつら気付いてなかったのか…。俺は呆れて溜め息を零す。


「俺達三人が落ちたら誰も浮いてこねえぞ」
「うお!?そしたらおれたち死ぬのか!?」
「だいじょーぶ!ゾロとウソップとサンジがいる!!」
「おお…!」

「その前に落ちない努力をしなさい!」

「「「ぎゃ!!」」」


すっかり三人だけ(いや、二人か…?)で盛り上がっていた俺達は、不意に聞こえた別の声に飛び上がる。なぜなら、その声にはたしかに殺気が含まれていたからだ。

そして俺達は短い悲鳴を上げて縁から滑り落ちた。


甲板側じゃなくて海側に、な…。




三人寄れば?

手間が増える!ったく、言った側から落ちてんじゃないわよ!


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