よく食べ、よく笑え
ガツガツガツガツ。
「おら!どんどん食え!!」
「むん!おふぁわり!!」
「そらよ。よく味わって食え!」
「むーん!んまい!!」
腹が減ったと目を回していたら、見かねたサンジが皿に取り分けた料理を持ってきてくれた。一口食べて虜になり、二口三口と止まらなくなるその味に、空腹という名のスパイスは些か効きすぎたようだ。
「むぐむぐ……サンジ!お前の飯は最高だな!!」
「ったりめーだ。なんたって俺は一流コックなんだからな」
そう言って不敵に笑うサンジ。俺はそれににっこりと笑い返して、再び料理を堪能する作業に戻った。
「ん゙ー!!ほれのにふ!!!」
「うっせえ早いもん勝ちだ!!」
横で俺と同じ、あるいはそれ以上の勢いで料理を平らげていくルフィ。そんなルフィに食われる前にと狙った肉を自分の皿へ避難させる。ルフィは口をもごもごさせながら叫んでいたけど、俺はそれに構わず戦利品を口へと運んだ。
「おい、ルフィ!てめえは食い過ぎだ!ライはもっと食え!痩せすぎだ!!」
「む゙っ!?…ゲホ、ゲホッ!!」
“痩せすぎだ”
その言葉で、俺はサンジに腰を抱えられたことを思い出して咳き込んでしまった。涙で霞む視界に水の入ったコップを捉え、それを一気に流し込む。なんとか治まったところで一息吐き、何食わぬ顔で食事を続けるサンジへと視線を戻す。
「おい!俺が痩せすぎってどういうことだよ!?」
「そのまんまの意味だ。腹が減ってる奴にはちゃんと飯を食わせてやるのが俺のポリシー。お前、どうせろくに飯食ってねえんだろ?」
だからもっと食ってもっと太れ。至って真面目な顔でそんなことを言うもんだから、喉まで出掛けた暴言はそのまま胃まで逆戻り。代わりにムスッとした表情で俺の言い分を言い返すことにした。
「別に痩せすぎてねえし、飯も食ってないわけじゃねえよ」
「にしたって軽すぎだろ。腰なんてこんなに細いじゃねえか」
そう言ってジェスチャー混じりに俺の腰の太さを話したりするもんだから、つい反射的にその頭を殴ってしまった。あ、と思った時にはもう遅く、キレたサンジと一緒にナミの拳に沈められた。ルフィとウソップは笑ってそれを見ていたけれど、ゾロは呆れ顔で俺達の顔を見比べ、ビビとカルーはひたすらオロオロしていた。
麦わら海賊団、案外良い奴らなのかもしれないな。そう思わされる夜だった。
よく食べ、よく笑え
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