腹が減ってはなんとやら



「おい野郎ども!俺が腕に寄りを掛けて作った飯だ!!有り難く食えよ!!」
「「「おおー!!」」」


右手に左手に右足に頭に…と、持てるだけ料理を持った眉毛野郎、もといサンジが甲板へと踊り出る。ルフィとウソップは既に席に着いていて、その手にはしっかりとフォークとナイフが握られている。皆が席に着く前に料理を食べようと腕を伸ばしたルフィは、呆気なくサンジの蹴りに沈められた。

サンジの奴、容赦ねえな。なんて思っていたら、料理を置いたサンジがこちらに向かってくるではないか。あんまり良い予感もしなかったので、俺はしかめっ面を作ってサンジを迎えた。

俺の予感はやっぱり的中。サンジは口にくわえた煙草をずい、と俺に向けてこう言った。


「いいか、これはビビちゃんの乗船を祝うことをメインにした宴であって、お前はオマケのオマケだ。分かったかクソガキ」


ついでに、お前は仲間とは認めねえ。そんな心の声が聞こえた気がした。分かりきっていたとは言え、やっぱりムカつきはするもんで。だけど、すぐに噛み付きはせずに皮肉を返すことにした。


「はいはい。サンジが可愛い女の子大好きってのはよく分かったよ」
「あんだとこのクソガキぃ!?」
「やるなら相手になるぜ!」
「やめなさい!!」


ガツン。今にも一勝負始めそうな俺達の頭に落とされたのは、ナミの怒りの鉄拳。頭の中で鈍い音が響いたと思ったら、次の瞬間には視界が回った。ぐらぐら揺れる視界を止めようと足に力を入れてはみるのだが、如何せん、2日もろくに食べていない体は言うことを聞いてくれなかった。


「……っ」
「おいおい情けねえな」


ぐらりと続く嫌な揺れを止めようと、額に手を当てる。崩れ落ちかけた俺の体は、寸でのところでサンジに支えられた。


「お前…」


ぐるるるる。サンジの言葉を遮るように、腹の虫が盛大に鳴いた。サンジの手は支えるように腰に回されていたから、その鳴き声はもろに伝わったことだろう。


「頼む、早く飯を食わせてくれ…」


羞恥心なんてもんより、この飢えをなんとかしたいんだ。



腹が減ってはなんとやら


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