赤くなった耳



リーダーっぽい人の案内の元、着いた村の名前はビッグホーン。来る途中にもハイキングベアという変わった熊に会ったが、ここにも毛モジャのカバだとか変な動物が多い。俺も半分動物みたいなもんだが、あくまでも人なので彼らの言葉は分からない。まあ、それはそれで面白いと思うことにしているけど。


(はっ!おい見ろルフィ!ハイキングベアだ!)
(またかっ!!)
(アホか)


パッと見、ハイキングベアに見えなくもないご婦人に一礼するアホ共を侮蔑の眼差しで見る。どうやらご婦人は俺達海賊が…あー、訂正。俺と海賊達が来たことを聞き付けたらしく、リーダーっぽい人に大丈夫なのかと尋ねていた。それに対して彼はご心配なく、と苦笑しながら返す。…あれだけ警戒してたのにもうこんなに信用されてる。ルフィとビビのお陰だな、こりゃ。

すぐに俺達はそのリーダーっぽい人の家に案内され、そこのベッドにナミを寝かせた。外に比べれば暖かいけど、やっぱりまだ寒い。俺は暖炉に火を点けるリーダーっぽい人…改め、ドルトンさんについて行って暖炉の前に座り込んだ。パチパチと爆ぜる火が手袋越しにも暖かい。


「…お前、もしかしてこれが目的でついて来たのか?」
「まあ、期待してなかったと言えば嘘になる」
「ったく、しょうのねえ奴だな」


後ろでサンジの呆れたような声が聞こえる。それもそのはず、俺は暖が取れることを期待して船を出てきたんだから。…だって、メリー号には暖房器具の一つもねえんだぞ?そんな寒い所に残るくらいなら、暖房のありそうな村まで出てきた方がマシだ。結果、サンジにはそれがバレて呆れられてしまった訳だが。


「おら、今の内にしっかりあったまっとけよ?」
「う、わっ」


ぼふん、と何が頭に押さえ付けられて、反射的に驚いたような声が出る。手に取ってそれが何なのか確かめてみれば、さっきまでサンジが巻いていたマフラーが頭の上にあった。マフラーなら俺も巻いてるのになんでだ?と思って、いつの間にか煙草を吹かしていたサンジを見上げる。


「耳、冷えてんだろ?真っ赤になってる」


そう言われて乗せられたマフラーの下に手を入れてみれば、確かに痛いくらい耳が冷たくなっていた。前に敵から奪った帽子は船に置いて来ちまったからなあ…。ここは素直にお礼を言っておこう。


「どーもありがと。案外気が利くんだな」
「これ以上病人が増えても困んだよ。あと一言余計だクソネコ」


サンジのその言葉に人の事言えねえだろ、と思ったが、今回はマフラーに免じて大目に見てやることにした。後で覚えてろよ。



赤くなった耳


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