はじめましてのご挨拶



「…い………のか…?」
「……!?………!!」
「まあ………か?」
「……かも………だな」
「……いのよ!!」
「……ねえ。………な?」



声がする。それも複数の。でも、どれも聞いたことのない声だ。誰だろう。新入りさんでも来たのかな?


「…おーい。お前、死んでんのか?」
「バカっ!縁起でもねえこと言うんじゃねえ!!」
「息はしてんだ。死んではいないだろ」


ゆらゆらと揺れる地面。俺はそこに横たわっている。上から降る複数の声には、男も女も混ざっている。

そして、起きろだなんだと頬を叩かれたりしてうんざりしながら仕方なく薄目を開けた。…ら、僅かしかない視界いっぱいに白い靄が広がった。


「…ってえええ!!!滲みる!目に滲みる!!」
「やっと起きたかクソ坊主」


痛みと涙で歪む視界をごしごしと擦り、何やら咳き込む喉を抑えてやっとの思いで目の前の男を睨む。すると男はくわえた煙草を噛み潰すように顔を歪めた。どうやらあの白い靄の正体はコイツの煙草の煙だったようだ。コノヤロー。


「おら、起きたんならまずは礼を言えクソ坊主」
「ホント、お前って男には容赦ないよな」
「ったりめーだ。野郎にくれてやる優しさなんてモンは存在しねえ。…相手が海軍なら尚更、な」


そう言ってぐるぐる眉毛の男は俺をギロリと睨んだ。眉毛の男の後ろでは緑髪の男が同じようにこちらを睨んでいる。ああ、俺も本当に運がないな。拾われたのが海賊船じゃあ、あのまま海で漂っていても結果は変わらなかったじゃないか。


「なあお前!なんて名前だ?」
「は?」
「俺はルフィだ!この船の船長やってる!」
「ルフィ…、麦藁のルフィ…?」
「おう!!」


突然、眉毛野郎と俺の間に割り込んできた少年。彼は麦わら帽子の下に満面の笑みを称えて俺の前に現れた。あんまりな現実に目眩を覚えた俺の視線は自然と遠くへ飛び、頭上に浮かぶ空へと向けられようとした。…だが、視界いっぱいに広がったのは青と白の美しい空ではなく、不敵に笑うジョリー・ロジャー。

麦わら帽子が、やけに眩しく輝いていた。



はじめましてのご挨拶


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