嵐と嵐の間の静け
あの人と島を出てどれくらい経っただろう。
あいつらを追って船を出て、どれくらい経っただろう。
…さすがに、無謀すぎたかな。
Capricious Cat
揺れる波は無情。照り付ける空も無情。唸る腹も無情なら現実全てが無情。
「あー…くそ。すっげー腹減った。喉も渇いた。風呂にも入りてえ」
船の燃料、食料、飲料が全て切れて二日が経った。どうせすぐに追い付けるだろうと高をくくって、一人でも動かせる程度の船で追って来た俺はあっという間に遭難者。今はもう、命が尽きるのを待つか希望の光を待つかの二択しか残されていない。もし仮に希望の光…船が通りかかったとしても、それが海賊船だったなら全てお仕舞いだ。
助かる望みはない。
「こんなことになるなら、皆が止めるの聞いて諦めときゃ良かったかなあ」
ぼんやりと、船や島に残った皆の顔を思い浮かべる。
いっつも俺のことを捕まえようと躍起になっていた部下達。
それを援護する事務の皆さん。
毎日取り立てに来る飲み屋のお姉さん方。
そして逃げる俺…。
「…あんまし良い思い出ないっすね」
つい、癖になっている妙な敬語が出てしまった。顔の半分以上を覆う口布の下で小さく笑い、目を細める。
かんかんと照らす太陽の下で仰向けになり、突き出た帽子の鐔の向こうにあの人の顔を思い浮かべた。
「やっぱり、あの人に太陽は死ぬほど似合わねえや」
そうぽつりと呟いて、俺は意識を手離した。
嵐と嵐の間の静け
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