神の後継者とヴァイス女王が従者について話してみた(仮) [ 132/143 ]
<神の後継者とヴァイス女王が従者について話してみた(仮)>*この会話SSは、*RihiraSerenita'の橘伊鞠さんとのコラボ企画となっております。*リヒセレ内「神創系譜」主人公リリスティアと、ティアレジェ内「水面に映る蒼い月」主人公シエラが互いに似た境遇ゆえに対談してみようというこの企画。
*さらになんと、挿絵はR-LAUCKの東野巧さんが描いてくださいました!*時間軸は水面本編第28話「神の祝福」直後を想定しておりますので、未読の方は
若干のネタバレにご注意ください。
*以下の注意事項を確認し、ご同意いただける方のみお楽しみください。
・SSは倭姫、橘伊鞠がリアルタイムに確認をしながら作成した物です。
・挿絵は東野巧さんにお願いしました。
・双方の小説を読んで頂いていると楽しめるかもしれません。
・両小説、最新話までのネタバレを含みます。ご注意下さい。
・コラボ、もしも話などを含みます。ご理解頂いた上での閲覧をお願いします。
・親交ある管理人同士のコラボ企画です。閲覧=上記注意事項を了承したものと判断させて頂きます。申し訳ございません。
シエラ
「久しぶりだな、リリスティア。……こんなときに訪ねてくるとは、お前も相変わらず変わっている」
リリスティア
「大変な時にすまない。その、迷惑かもしれないと思ったのだけれど、……どうしても、気になって」
「気になる? アスラナが?」
「国を憂うのは王の役目。私が心配しているのは、シエラの事だ」
「私の? だが、別に怪我をしたわけでもないし、特に問題はない。お前のように戦場に出るわけでもないしな」
「戦いで傷ついた体は、いずれ癒える。だけどシエラ。心はそうではない筈。……大丈夫?」
「別に……。ただ、少し疲れただけだ。……リリスティアはここにいてもいいのか? 今のアスラナは穏やかではないし、またあの
ヒルスヘ……
赤いのが心配するんじゃないのか」
「ヒルは一国を担う総指揮官だ。自分の役目を、よく……分かっている。だから、私の事は気にしなくていい」
「……? なにか含みのある言い方だな。お前こそ、ひどい顔をしている」
「か、顔色が悪いのは、執務が忙しいからだ。その、だから、つまり今の私ならシエラの相談に乗れるかもしれないと思って来たんだ! ……エルク殿の事で」
「エルクの? ……相談、と言っても……。ただ、その……。アイツの様子が変になったくらいで、相談することなんて、なにも……」
「少しだけライナ殿から聞いたんだが、エルク殿の態度がおかしいとか」
「…………おかしくは、ない。……従者としてならあれが正しいんだと思う。ただ、急に変わったから慣れないだけだ。今までとは、違うから」
「人は変わるものだと分かっていても、受け入れがたい時もあると思う。同じだシエラ、私も」
「同じ? お前のところは違うだろう? ……友人のように親しげだったじゃないか」
「私は今、同盟主でもある。まだ即位して年月は浅いが、色々と考えなければいけない時期にもなっている。ヒルは、軍の総指揮官で、私は一国の王だ。絆はあるけれど、引くべき線は誰の目にも見えるものでなければならない。……だから」
「(????)――だから、とは?」
「だ、だから。その、
シエラも今寂しいんじゃないかと思って!」
「――ああ、つまりリリスティアは今、寂しいのか」「つまりってなんだ! 誰もそんな事……い、言ったかもしれないけど……。でも、シエラだって落ち込んでるじゃないか。エルク殿も、さっき見た時はなんだか様子が違った。一体、今どういう状況なの?」
「どうと言われても……。ホーリーから帰ってきて、そこまでは今まで通りだった。ライナから聞いていると思うが、魔導師と色々あったんだ。それで、リヴァース学園から帰ってきたくらいから、急に……他の従者と同じように、急に態度が改まった。私のことを呼び捨てにしないし、常に丁寧な喋り方をする。……最初はなにかの嫌がらせかと思った」
「急に? 意味が分からないな。陛下に命令でもされたのか」
「分からない。エルクは自分の意思だと言っていたがな。これが本来あるべき姿で、今までが間違っていたと」
「相談もなしにそういう事されると困るよな」
「ああ、まったくだ。今の今まで距離が近かったのに、急に手のひらを返したように豹変して、なんと言うか……」
リ「寂しい」
シ「気持ち悪い」リリスティア
「えっ?」シエラ
「え?」「………………。軽い言葉を交わせない雰囲気を作ってくるから、困るよな」
「……? お前のところも、そんな風に?」
「……………………(さ、さっき言ったけれど、伝わってなかったようね)うん。急に身分の違いを強調し始めたり、敬語を通したり。シエラの今の状況と同じだ」
「そうだったのか。リリスティアも苦労するな。……本人達は考え合ってのことだと言うが、それに付き合わされる身にもなってほしい」
「大体、短絡的なんだ。そうすればまとまると思ってる」
「こちらのことを考えたと言うが、結局は自分勝手じゃないか」
「誰もそんなことしてほしいと言ってないのに」
「元に戻せと言ったところで聞きやしない」
「やっぱりか……! その癖に
ベタベタ触ってきたり、思わせぶりな事を囁くんだ。振り回される身にもなってほしい!」
「は?」「え?」
「べたべた触る? あの赤いのが? お前に?
なぜ」
「えっ、いや、分からないけど……、え、エルク殿は」
「いや、まったく。……ん? いや、まったくということもないか……?」
「
そうだろう!?」
「手の甲に口づけたりはしてくるな。
騎士の挨拶とやらで。お前のところもそうなのか」
「え、えっ……、
その程度……」
「は?」
「シエラはエルク殿と、
そういうあれでは……」
「あれ?」
「〜っ、ち、違ったらいい! ……同じように辛いと思ったんだ……。エルク殿と触れ合えなくて、きっと寂しいって」
「リリスティアは、そんなにも赤いのと触れ合っていたのか」「
なんでそっちばかり気にするんだ! お前とエルク殿の話だ!」
「? 私とエルクの話なら、今話しただろう? ――ああ、そうだ。一緒だと言うなら、一つ聞きたいことがあるんだが」
「(……まあ、渦中であるのに、あまり問い詰めることでもないかもしれないな)聞きたい事とは?」
「リリスティアも、この件であの赤いのを
殴り倒したいと思ったことはあるのか? 一度強めに頭を殴れば、元に戻るのではないかと考えたこともあるんだが、私ではどうしても気配を悟られる。その点、リリスティアなら、」
「!? 殴ると危ないぞ!」「でもエルクの場合、最初はそれで態度が砕けたんだが」
「殴れば分かりあえることもあるの……?」「出会った頃、
一度頭を蹴り飛ばしたら話しやすくなった。お前のところは違うのか? やってみればいいだろうに」
「シエラはそんな事をしていたの……。怒られなかった?」
「怒られたな。確か、思い切り怒鳴られた気がする」
「ええ……。駄目じゃないか……」
「駄目なのか? よく分からないが、リリスティアと赤いのとの出会いとは違うようだな」
「私は……気付いたら後ろをついてきていた」
「ストーカーか」「いや違う、最初は酒場でいきなり声をかけてきたんだ!」
「ナンパか」「違っ……! 私が何者か知っていて、声をかけてきたんだ。最初はそれを隠して近づいてきて、あの」
「…………まあ、リリスティアがそれでいいなら、いいんじゃないか……?」
「……………………(コホン)。シエラ、エルク殿とこれからどうする気なの?」
「どうする、と言われても……。私としては、今まで通りに戻したいが……。アイツは、その気がないようだ。なら、それに付き合ってやるしかないだろう。…………リリスティアが言ったように、“立場”というものもあるだろうし」
「神の、後継者として……?」
「………………そう、だな。お前が王であるように、私は神の後継者だから」
「生まれた時から定められた立場であるシエラと、与えられた立場である私では違いがある。だけど、シエラ。今貴女がそんな顔をしている理由は、苛立ちは、……同じだ。だけど、歩いていくしかないのかもしれないわね」
「そうだな。――お互い面倒な立ち位置だが、エルクは赤いのほどべたべたしてくることはないから、変な気がしない分、お前の方が苦労しているのかもしれないな」
「そうね。――お互い面倒な立ち位置だけど、ヒルはなんだかんだでいつも穏やかに接してくれるから、そういう意味では心配をさせない大人だし、気は楽かもしれない」
「…………」「…………」「……赤いのに比べればエルクは若いが、その分わかりやすいこともあって楽だ。態度は変わっても、気が回るところは変わらないし」
「……ヒルは大人である事を武器にしがちだが、気持ちに波が無い分、こちらも落ち着く。いつも傍にいてくれるし」
「傍にいるのは、エルクだって――……。ん? ああ、すまない、リリスティア。呼ばれたみたいだ。……今日は話せて、その……よかった、と思う」
「え、ああ……もうそんな時間。なんだか最後はちょっと違う話になってしまったけれど、少しでもシエラの力になれたなら良かった」
「――ああ。ありがとう、リリスティア。できればまた、ゆっくり話したい。……今度は、四人で」
「ええ。是非、今度はヴァイスに来て。歓迎する。昼寝をする場所、用意しておくから」
「楽しみにしている。それでは」
シエラ
(……ヴァイスの主従関係というのは、ナンパから始まるものなんだな……。一つ賢くなった気がする)似ているようで全く異なるこの二人。
定められた運命と拮抗し、取り戻せぬ過去を胸に秘めて未来を切り開く長編ファンタジー、
「神創系譜」
「水面に映る蒼い月」そして挿絵を担当して下さった巧さんの創作小説サイト
「R-LAUCK」を、これからもどうぞよろしくお願いします!
(2015.02.24.)