▼棺桶と約束


全部終わったら小さな田舎街で一緒に暮らそう、そんな囁かな願いさえ叶わなかった。
この男は結局俺とした約束を何一つ守らない。

待ち合わせも、飲みに行く約束も、誕生日も、何もかも本当に全てだ。

俺がどうしてこんな女々しいことを言うかっていうと本当の本当に約束より仕事を優先させる男だったからだ。

終いには俺の唯一の囁かな楽しみと夢と希望すら守らないやつだ。

俺は生きる意味を喪ってしまった。
でも死ぬ意味も見つからなかった。

俺はお前が思っている以上に打たれ弱いんだ。

いまの俺の生きる意味は死んだ時お前にお前が見ることの出来なかった世界の真実ってやつを教えてやるためだ。
そして言ってやるんた。
俺との約束を破ったからこうなるんだ馬ー鹿。俺はちゃんと全部見てきたぞ。
って。得意げに言ってやる。
じゃああいつも約束を破ったことを後悔するだろう。
もしかしたら謝るかもしれないな。
ざまーみろ。

その後はひたすらにお前とセックスがしたい。
お前を喪ってから口寂しくて仕方がない。
土の中には何も無い、ただの虚像にも近いお前の墓の前で毎夜酒を飲んだよ。
瓶1本持ってて、半分くらい飲んだらあとはお前の墓にぶっかけてやるんだ。
ここにお前はいないのにな。
かなりハンジには心配されたよ。
でも俺は至って平常だった。
これでもかってくらい冷静にお前の墓と向き合えた。

「遅くなって悪かったなエルヴィン。迎えに来たぞ」

今日やっとお前のいない形だけの墓にお前を埋めてやれるよ。
花も一緒に棺桶に入れてやろうか悩んだけど折角咲いた花を骨と一緒に土に埋めちまうのは忍びねえから墓にたくさん飾り付けてやることにした。
ハンジは入れたいものが沢山あるって言ってたぞ。
俺は何を入れようか。
何も浮かばねえな。
お前の部屋はもうハンジの部屋だ。
お前の少ない荷物は殆ど処分したかお前の母親に渡しちまったし、本や書類は部屋と一緒にハンジにあげちまった。
俺が持ってるお前のループタイは、勘弁して欲しい。
お前にとっては誇りのようなものだったかもしれないけど、俺にとってそれは宝石みたいなもんなんだ。
いつもキラキラしてた。
お前の瞳にも似た輝きだったと思う。

だから、俺のスカーフを代わりに入れとくよ。
兵団服が変わっちまうらしい。
ハンジとアルミンとジャンと技術班の奴らが怪しげに話してたかと思えばよくわからん真っ黒の着づらそうなのが完成しちまった。
まあ着れればなんでもいい。
戦えればそれでいいよな。
でも首が詰まってるんだ。
だからもうスカーフは着けられねえ。
これを俺と思って持っていけ。

「リヴァイ、他に入れるものは?」
「ない」

ああ、棺桶の蓋をもう閉めちまうのか。
スカーフなんかじゃなくて、俺がお前に着いてってやれたらいいのに。
本当はずっとそう思ってた。
1人なんてさみしいだろ?
きっと先に死んだ兵士は天国で、お前じゃ行けない場所だろ?

「おやすみ、エルヴィン。良い夢を」
「エルヴィン、すぐに追いつくから待っててくれ」
「縁起でもないことを言うなよ」
「本気だ」
「……」
「……」
「…まあ、いいんじゃない。でも自暴自棄にはならないでよね。貴方にはまだやってもらいたいことは沢山あるし、それにエルヴィンと約束したんじゃないの?」

ああ、また約束か。





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