▼きみだけでいいよ

※ぬるいR-18
※時間軸はエレンたちが訓練兵中くらい


初めて壁外での彼を見た時、その背中には本当に私達の求める、自由の翼が生えているのではないかと錯覚するくらい、私は彼に見惚れた。
それはまさしく、人類の希望であった。



私はすぐに彼に興味を持った。
どうしてあんなに速く飛べるのか。
最初は疑問からだった。
彼に興味を持ち、知りたいという欲求がどんどん溢れて、彼と行動をよく共にして、いつの間にか惚れていた。
口は悪いし、伝わりづらいところがあるけど人1倍、優しい人。面倒見のいい人。お人好しな人。
筋が1本ピンと通っている背中は誰よりも大きく見えた。
何よりも安心感があった。
他の人にはない安心感。
それは、彼の強さからくるのかもしれない。
沢山仲間を失った私達の中で唯一、群を抜いて強いひと。死ぬところなど想像もできない人。
本当に一人で、巨人をやっつけてしまいそうな、安定感と安心感のある人だった。

彼を尊敬するもの、敬愛するもの、畏怖するもの、羨望するもの、沢山いた。
時には恋するものも。
私もその1人だった。
尊敬も敬愛も羨望も、ある種の畏怖も、そして恋も。
私は運が良かった。
だって、私の恋には、愛には、応えてくれたのだ。
これ以上もない幸福感に満たされた。
彼と一つになる時、人生で一番満たされている時間に感じた。
愛しいと、これほどまでに思えるのは何故だろう。

「ねえリヴァイ、中に出してもいいんだよ?」

彼が私のお腹に射精する。
私は腕を伸ばして彼の頬に触れた。
彼は呼吸を整えてから私のお腹を布巾できれいに拭いてくれた。
彼はこれまで1度も避妊を怠ったことも、胎内に射精したこともなかった。避妊をしても、必ず。

「ガキが出来たらどうする」
「リヴァイの言葉を借りると、悪くねえ…とか?」

笑う私を彼は睨みつけた。
いや、睨んではないのかな。
彼は元々眉間に皺寄ってて、いつも目つきが悪いから。

「全然良くねえ」
「…リヴァイは、子供ほしくないの?」

私は彼を愛していた。
彼も、私を愛してくれている。
その自信があった。過信ではない。
本当に貴方との間に子供を設けることが出来たら、なんて幸せだろうと思うほど、愛していた。

「いらん」

彼はそう言って私の隣に寝転んだ。
シングルベッドに大人ふたりは相変わらず狭い。
彼は私の頬にそっと触れた。

「もし、親が死んだら、子供はどうする。どうやって生きていく。」

彼の言葉が、私の頭を鈍器で殴るように、ドシンと響いた。
ああ、そうだ。
彼は幼い頃に母親を亡くして、そこから死にものぐるいで生きてきたんだ。
彼も人の子で、人1倍、死ぬほど怖い思いとか、死ぬほど辛い思いもしていて。
いつかは、彼も死んでしまうのだった。
なんて簡単なことを、私は忘れていたのだろう。
彼も、私も、いつかは死んでしまう。
今は運良く生きているけれど、次の壁外調査で喰われてしまうかもしれない。巨人と戦闘中に馬がどこかに行ってしまい一人荒野でさ迷い歩く羽目になるかもしれない。
死と隣合わせで、心臓を捧げた調査兵団の兵士失格だ。

「そんな顔するな」

彼の声に我に返って、どんな顔してた?と聞き返すと、俺みたいな顔だ。と言った。

「それは大問題だね」

と言って笑うと彼も少し眉間の皺を緩めて微笑んだ。

「ガキはいらねえ。お前だけでいい。」

彼はそう言って私を抱き寄せた。
彼の腕は筋肉でずっしりと重くて、温かくて何だか安心した。私は彼の腕に抱かれるのが大好きだった。

「もし、生きている間に、人類が自由を取り戻したら」

その時は俺の子を産んでくれ。と彼が耳元で呟いた。
私は嬉しくって目いっぱい彼を抱きしめてキスをした。






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