「ハンジよ、お前、俺のことが」
「リヴァイ、それ以上、言わないでくれ…」





12月26日、リヴァイの誕生日を仲間内で祝っているうちに日付が変わった。
午前0時31分
みんな酒に呑まれてそのまま寝こけてしまった。
同期だけで行ったリヴァイの囁かな誕生日会を研究に夢中になりすぎて遅れていった私は、酔い潰れた皆の中で、ただ1人静かに呑み続けるリヴァイを見た。

ああ、今年も祝えてよかった。
生を噛み締めるように酒を飲み交わして1時間が経った頃、お開きにして皆に毛布をかけてやった。
リヴァイはだいぶ飲んだあとなのにも関わらず顔色を一切変えず、完璧に後片付けをこなした。
2人で部屋に戻る途中の回り階段で、突然リヴァイに壁に押さえつけられる形になる。
私の身体がリヴァイの腕と腕の間にある。

「リヴァイ、酔ってるの…?」
「酔ってねえ…いや、酔っているのかもな。俺も、お前も。」
「?」

リヴァイの目つきは相変わらず鋭くて捕えられるようで思わず目を逸らした。
そこで、冒頭に戻る。

「なあ、ハンジよ。お前は酔っている。酔って、気付かないふりしてんだろ?」
「…っ私は、私の心臓は、もう、人類に捧げている…私は、心臓を捧げた兵士だ…」
「…ほう」

リヴァイの瞳は私を射抜く。
その瞳が、いまは苦しくて目を合わせられないままだ。
薄暗い階段の途中で、リヴァイと自分の吐息だけが微かに聞こえる。
気が可笑しくなりそうだ。

「なあ、ハンジ」

リヴァイが、ゆっくりと肘を折る。
リヴァイの腕の分だけあった私達の距離が近くなった。リヴァイは私の肩に顔を埋めた。
彼の髪が鼻に当たって擽ったい。
行き場の失った自分の腕を、彼の背中に回した。
人類最強の背中は、今日だけは、今だけは、小さく感じた。

「夜は、巨人は動かねえ」
「そうだね」
「なら、その間だけ。その間だけでいい。お前の心臓を俺にくれ」

目を見開いた。
だって嬉しいじゃないか。
でも驚いたんだ。
だってずっとリヴァイが好きだった。
思春期の女の子みたいに。単純に好きと思えた。
一緒にいたい。生きたい。彼の傍は心地よい。
けれどいつ死ぬか分からない。
怖かった。生ぬるい温かい友情をはみ出して一歩進んだ先に、別れがあった時。
きっと死にたくなるほどの後悔をするから。

「…嫌だ。私だけあげるなんて、不公平じゃないか。リヴァイのもくれよ」
「…いいだろう。くれてやる」

私が笑っていうとリヴァイは、私の肩から顔を上げて珍しく微笑んだ。
目付きの悪い彼からは想像もできないくらい優しい微笑みだった。
私はさっきより一層強く、彼を抱きしめた。

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