キスをしてしまってた。研磨と。
いつも通り研磨の部屋で研磨とゲームしてて
一段落ついたときに、
なんの疑問もなく、なんの躊躇いもなく、
俺たちこのままただの仲いい幼馴染みじゃなくなるのかな、なーんて
湿っぽ

「さみーな」

自主練するっつったら研磨に先に帰られた。
珍しくもない1人だけの夜道を歩く。
12月になって白い吐息が出るようになる。
はぁーっとわざと吐き出してみた。

彼女ができたことないわけじゃねーし
ぜんぜんモテたりはねーけど
運動部はモテるっつーのは迷信だ。
だいたい部活優先ですぐ振られるし

なんでしちゃったんだろなー
べつにこれから発展させていく気があるかと言われれば、分からん。
俺からしたくせに無神経だ。
でも俺もまだまだピュアだし女慣れなんてぜんぜんしてねーし。
どうしたらいいかわからないっていうのが本音で
ただ別に研磨とキスしたのが嫌だったわけでもない。
おそらくあいつのファーストキスを奪っちまったのは、うん、ごめん。最初は、てか最初だけじゃなくても女の子がいいよな、普通。
一瞬触れるだけだったのに、唇の感触は離れることはなくて、男のくせに女みてーに柔らかくて、ちょっと薄めの、なんつーかうん。ちょっといやけっこー好みってうそうそうそ。相手は研磨研磨研磨。
ほっとけなくて危なっかしい幼馴染みに本気になっちまったらどーすんだ、馬鹿野郎。俺の馬鹿野郎。
一人でグダグダ考えて、全部霧散させるようにブンブンと首を降った。

「うわっ、何してんのクロ…」

急に研磨の声が聞こえて辺りをキョロキョロ見渡してみてもいない。
ついに、幻聴?やばいな俺…。

「上」

声の言う通りに見上げると、二階のベランダからひらひらと研磨が手を振っていた。

「なにしてんだ」
「洗濯物入れてる。母さんに頼まれて」

クロこそ危ないよ?そんな変な行動してたら
と、研磨に言われる。
あ、なんかホッとしたかも、なんて。
今まで考えてたことわりとどうでもよくなってきて
研磨ってすげーなって思っちゃったり

「研磨、コンビニ行こーぜ」
「むり。洗濯あるから。クロ、アイス買ってきて」
「さみーのにアイスかよ!」
「いいから」

顔が、早くいけって顔してる。
はいはい、と言って俺は自分の家の目前で踵を返した。
元来た道を辿ってポケットに突っ込んである携帯を取り出して母ちゃんにメールを送る。

幼馴染みの年下に、パシリにされてんのに、
こんな状況でも、顔がにやけてしまう自分は相当病気で重症だ。

「っし、さみーな」

携帯と一緒に冷えた手もポケットに突っ込んで俺はコンビニに向かった。

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