無性に、人肌が恋しくなることはないだろうか。

俺はある。最近。ちょーある。
任務もなくて、やることなくて、
自分の部屋でベッドに寝転がりながら日本で買ったTVゲームしてる時とか、ナイフの手入れしてる時とか、スマホ弄ってる時とか、
ふと、辺りを見回すと当たり前だけど俺しかいなくて。
拭いきれない寂しさというか虚無感というか。
大したことない日常の1つのはずなのに、世界で独りぼっちになってしまったような感じ。
その度に馬鹿らしいと鼻で笑う。
でも何も変わらない。
この淋しさも、淋しく感じることに呆れることも。

1人の時間の潰し方は知ってる。
1人で任務以外で身体を動かすのも好きだし
1人でゲームするのもいい
1人で買い物だって行くし
1人でお菓子摘んだり
1人でナイフの手入れもするし
1人で報告書も書く
1人で本を読むこともする
1人で眠りにつくし
1人で目覚める

ふと感じる空しさに、
横を見ても後ろを見ても上も下も斜めも
どこを見ても何も変わらない。
どこを見ても違和感しかない。

なんだこれ。

生まれてから今まで、淋しいなんて微塵も思ったことは無かった。
最初は大嫌いな双子の兄がいたし、その後はずっと喧しいヴァリアーで育った。
退屈とか、淋しいとか、空しいとか、
感じる暇なんてないくらい充実してて、騒がしくて。




寂 悲 哀 嘆 泣 虚 錆 エトセトラエトセトラ





「やあ、久しぶり」
「おかえり、マーモン」
「僕がいないあいだ、どうだった?」
「別に何も変わんねー」
「そうかい」
「でも、つまんなかった」
「…そう」

マーモンが生き返った。
アルコバレーノは皆死んだのに。
ユニって子が命を賭して生き返らせたから。
マーモンがもう一度俺の前に立ってた。
アルコバレーノの用事があるって
生き返ってすぐどっかいって
戻ってきた。
平然と。
いなかった空白を無かったように。
そう、無かった。
空白なんて、無かったんだよ。
俺はマーモンがいなくても何も変わらなかった。
でも今生き返ったマーモンは
俺の横にいて、
なんだか少し驚いた顔をしてて
その後ちょっと笑って、
あ、レアって思って俺はスマホで写真を撮った。
マーモンは怒ってたけど、
俺もちょっとだけマーモンにムカついてたから
しばらく俺のロック画面は二やついてるマーモンの写真になった。

「最悪だよ。早く変えてよね」
「気が向いたら」
「それならすぐだね。君は飽き性だから」
「…じゃあ一生これにしーとこ」
「いつか水没させてやる」
「やってみ」

やっぱり、マーモンがいなかったときと
何ら変わりはない。
俺の周りはいつも煩くて騒がしくて
淋しいって感じる暇もない。

人肌恋しいと思うことはなくなった。
朝起きて空しくなることもなくなった。
やっぱり俺は変わってない。
朝起きて部屋を見渡しても
やっぱり誰もいないのだから。




← →
back


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -