「ずっと友達でいてね」

彼から紡がれた言葉は、なんて残酷で、
なんて美しいのだろうか。



美しい海、領土、そして女性に、世界遺産、料理
イタリアはどこをとっても美しかった。
それこそ理想で至高の国。

「ルート〜!今日はどうする?泊まってく?」
「いや、明日朝早いから帰ろうと思っているが、」
「ええ〜寂しいなあ〜」

後ろから駆け寄ってきたフェリシアーノがルートの腕をつかむ。ルートは戸惑いながらも拒むことは無い。
2人で夕暮れ時のイタリアの街を歩く。
夕日に照らされた海がきらきらと光るのが見える。
イタリアという国は、本当に美しい。

ルートの心臓はどくどくと脈打っていた。
いつもより少し速いスピードで。
何となく期待に満ちていた。
ああ、美しい。
ルートの心は満たされていた。
綺麗な情景、過ごしやすい気候。
美しい人々。
美しいフェリシアーノ…

ルートは、ハッと正気に戻る。
ぶんぶんと首を横に振り、平常心を手繰り寄せた。

「ルート?どうしちゃったの?」
「いや、なんでもないんだ。」
「?」

フェリシアーノは首を傾げて、変なの、と呟いた。
ルートの手を離して、駆け足で2、3歩ルートの前を行きくるくると回ってみせる。
ふふふ、と笑うフェリシアーノは上機嫌だった。
ルートは見とれた。フェリシアーノの姿に
無邪気で、弱い、フェリシアーノ
守ってあげたい
自分のものにしたい
優しくしたい
笑顔にしたい
でも少し泣かせてみたい
ルートの思考はぐるぐると色んな感情に苛まれる。
ああ、おかしい。
ルートは自分を責める。

ルートはフェリシアーノを愛していた。

「ルート、はやくっ」
「ああ」

フェリシアーノの手招きに、少しだけルートは歩を早めた。
ルートは自分を責めていた。
この感情にルートは気が付いていた。
そして、責めていた。
なんせフェリシアーノは男だった。
どんなに弱くても、
どんなに無邪気でも、

フェリシアーノが、笑う。
夕日をバックに、美しく微笑む。
それはまるで絵画の1枚のようで。

「ルート、ずっと友達でいてね」

フェリシアーノが笑う。
とても美しい言葉を紡ぐ。
それはルートの心を抉る、とても美しい言葉で。
とても残酷に、そして拗じるように。
それは、永遠の友愛の誓いであり、
永遠にこの恋が発展することはない。
という釘を刺す言葉だった。
ああ、虚しい。
ルートの心はナイフで抉られたように
深い暗闇に突き落とされるのだ。
フェリシアーノの笑顔が
天使のような微笑みが
傷口に蜂蜜を垂れ流すように、
甘い笑顔で、傷口を抉る。

「ああ、ずっと友達だ」
「ふふふ」

フェリシアーノの笑顔が眩しかった。
ルートは静かに笑みを零した。

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