※オメガバース
※マーモン呪解されてます。
※ベルの目の描写があります。
※マーモンは女の子設定です
※ぬるいR-18



この世界には、男性、女性の他にアルファ、ベータ、オメガ、という種類に分けられる。
大概の人間はベータに属していた。

「ベル!おわったかい?」
「ん、まーねーお待たせマーモン」

全身返り血まみれのベルが顔に付いた血を、汚ね。と一言漏らしながらコートの袖で拭う。
ホテルの一室の前で待たされていた僕にとっては迷惑な話である。
冒頭に戻るが、ベルはいわゆるアルファだった。
暗殺部隊ヴァリアー幹部はアルファが多い。
それは生まれ持った天賦の才を持った者が多いからかもしれない。
ベルは自分の性欲を持て余していた。
適当に女を見繕い、抱いてはその場で殺していた。
子供を作りたくないから、と避妊もせずに言うあたりがベルらしかった。
避妊してもできる時はできるから、とかなんとか。
その後の死体処理をするため、後方に待たせてある部下を手配する。
ベルのお目付け役の僕も毎回付き合わされる。
なんとも迷惑な話であった。

「マーモンはアルファ?ベータ?」
「さあ」
「赤ん坊だから関係ないか」

ししし、と無邪気に笑うベルが僕の頭をポンポンと撫でた。



それからしばらくして、未来からの記憶を受け取り、虹の代理戦争があり、僕の呪いは解け喜びに浸っていた。

甘かった。

そう思ったのは、呪いの解けた3ヶ月あとであった。


「うっ……!」

僕は自室の洗面台で腰が抜けていた。
ガクガクと足が震える。
呼吸も荒く全身が熱かった。
呪いのせいで長らく赤ん坊だったため、忘れていたのだ。

自分がオメガだということを。

「ふぅー…っ」

コップに水を入れ、薬を一気に飲み干す。
10代後半頃から訪れるオメガの3ヶ月に1度の発情期が、遂にきたのだ。
薬の作用で少しずつ呼吸が平静になる。
この苦しい生活がまた始まるのだと思うと、頭が痛くなった。

どうして僕が。

アルコバレーノになる前の苦悩が再び僕を悩ました。
誰かと番になってしまえば早い。
だが、相手がいない。
番は一生モノなのだ。
適当に見繕うことは出来ない。

「マーモン!」

そして、アルコバレーノになる前よりも、アルコバレーノの時よりも、厄介なのが部屋に勝手に入ってきた。

「マーモン!こんなところにいたのかよ」

しししっと嬉しそうに笑いながら勝手に部屋に入り、勝手に洗面台までずかずかと厚かましく入ってきたのは、ベルだった。
僕が呪解してからというものの、ベルに付き纏われていた。ストーカーっていうわけではないが、用事もないのに僕のところにきては僕にべったり。
使い捨ての女のように僕に甘い言葉を囁き恋人ごっこのようなことをしたがる。
どうせまた変な遊びなんだろうと、本気にせず適当にあしらって3ヶ月だった。

「マーモン、おいしい紅茶あるぜ」
「ふーん」
「ルッスーリアが焼いたクッキーも」
「ふーん」
「あとレモネードも」
「……」
「決まり、俺の部屋行こーぜ」

腕を引かれて僕はされるがままの状態でベルの部屋に連れていかれた。

「ベル、近いよ」
「しししっ いーじゃん減るもんじゃないし」

ベルは僕にべったりだ。
言葉の通り、本当に。
ソファーに1ミリの隙間もないくらいの距離で横に座っている。
クッキーだって食べづらいし、レモネードだって飲みづらい。

ふと、
ムン、と濃厚な香りが鼻をくすぐった。
匂いのもとを辿ると、ベルの首筋に目が行く。
あ、だめだ。と。
一人にならなきゃ、と。
本能的に感じた。
ドクドクと心臓が早まり、呼吸もままならない。
すごく、噛み付きたい。
ベルの首筋に、
発情してる。
あまりにも近いから、薬がきかない。
このままじゃベルもその気になってしまう。

立ち上がろうと足にグッと力を入れると、後ろから腕を引かれ、僕はソファーの下に尻餅をついた。

「マーモン?大丈夫?」

ベルが僕の顔をのぞき込む。
ちらり、と覗くベルの青い瞳が妙に熱っぽくて堪らなくて。
僕は本能のまま、ベルの首筋に噛み付いた。
ガリッという音がする。

「ま、マーモン?」
「ベル…っ、ごめん、僕…っ」

ソファーに座るベルに跨って、僕は息を荒らげたまま、ベルの唇に自分のを重ねた。
驚いたように、ベルの肩が跳ねた、けれどもすぐに背中に腕を回され、もう片方の腕が僕の秘部に触れた。
音をたてて、僕はキスに夢中になった。

「マーモン、オメガなんだ?」

唇を離すと、ベルが少し息を上げながら、僕のズボンの上から秘部をなぞる。

「キスだけですっげー濡れてる」
「…やだ」

ベルの触れる手がだんだん無遠慮になっていく。

「発情期なんだ、つらそー」
「やめて、ベル」
「王子が何とかしてやるよ」

後ろに下がろうとするも、ベルの腕に阻まれ膝の上から降りることもできない。
僕のフードをとり、首筋に舌を這わせる。
ぬるりとした感覚に気持ち悪い、と思いつつ身体はしっかり反応していた。

「あ、だめ、や、ベル、あん」
「かわいーマーモン」

呆気なくソファーに寝転がされベルが覆いかぶさる。
服も躊躇いなく脱がされて普段見せない肌にベルの筋張った、冷たい手が触れ身体が震える。
どこを触られても気持ちイイ。
発情期なんだ、仕方ない。
歯を噛み締めて、声が出るのを抑えながらベルの愛撫が終わるのを待った。

「ね、声聞かせろよ。聞きたい」

ベルの手が止まり、僕を見つめる。
首をふるふると横に振ると、ふーん、と冷たい一言。
嫌な予感がした。

「もーぐちゃぐちゃだし。慣らさなくてもいけるよなー」
「ベル だめ!!」
「だめ、お仕置き」

ベルはいきなり猛々しい自身を取り出し、僕の中を貫いた。
勢いよく挿れられ、痛みに顔が歪む。
そのまま僕の痛みなど知らず腰をゆさゆさと振られる。
痛いはずなのに
辛いはずなのに
オメガの自分の身体は
感じるのを止められなくて
待ってたと言わんばかりに悦んでいて
それが悔しくて
悲しかった。





「なーマーモン、俺と番になろう」

最後に見たベルの顔は、言動とは裏腹にとても切なくて、苦しそうで、理解不能だった。


ぱちり、と目が覚めた。
生きてる。
と思った。
あたりを見回すと、自分の部屋のベッドの上だとすぐに分かった。いままでのは夢だったのではないか、と思うくらい何も変わらない。いつも通りの部屋だった。

「う、」

起き上がると腰がズキズキと痛む。
それがさっきまでのが夢ではないと実感する。
服も何も着ていなくて、横に服が綺麗に畳まれていた。
うなじをさすると、何も無かった。
ホッとする反面
少し哀しくなった。

ベルとこれからどんな顔で会えばいいのか分からない。
彼ならいつも通りな気もするが。
窓の外を見ると太陽はすっかり沈んでいた。
時計は午後7時をさしていた。

「何か、食べよう。」

僕は服をきて薬を飲んでから、いつも通り食事に向かった。
ヴァリアーの幹部は一緒に食事をとることが多い。
基本7時半から8時の間に任務中の幹部以外が揃い食事をとる。
僕が部屋に行くと、すでに僕以外は揃っていた。
もちろんベルも。
ちらりと見るとバッチリ目が合った、瞬間ベルにすぐ逸らされる。
なんでだよ。被害者は僕だろ!
たしかに僕からけしかけちゃったかもしれないけど!
ムカツキを覚えたが、ルッスーリアに声をかけられ席についた。
幹部はみんなで食べるとはいえ会話が多い訳では無い。
いつも通り、いや、いつもより静かな食事だった。
いちばん喋るベルが静かだから。
みんなベルの明らかな変化に驚きつつ何も言わなかった。

「マーモン、あとで俺の部屋に来い」

静寂を切ったのはボスだった。

「オーケーボス」

ベルは少し顔を上げて、すぐにまた下を向き食事を続けた。



ボスの部屋のドアをノックすると、中から「入れ」と短く返事がかえってくる。
ドアを開け中に入るとボスはいつも通り椅子にふんぞり返っていた。

「体調はどうなんだ」
「え」
「お前オメガだろう」
「ああ、そうか」

ボスにだけは、入隊の時にオメガだということを明かしていたことを思い出した。
もっとも赤ん坊だったから、自分ですらオメガだということを忘れかけていたが。

「発情期きたんだ。今日」
「やけに落ち着いてるじゃねえか」
「さっき、ちょっと、」
「ベルか?」
「…そうなんだ」

ふん、とボスは腕を組み、興味もなさそうに鼻で返事をする。ボスには隠し事できないな、と少し思った。
オメガなんて関係ねえ、と言って僕を入隊させて、隊のみんなにはバレないよう発情期の薬を回してくれている。
ボスのこの気遣いがなかったらきっと今頃みんなの餌食だ。
それくらいオメガの発情期はアルファやベータを誘惑するフェロモンを発するのだ。

「しばらく任務はなしだ。落ち着いたらまた部屋に来い」
「ありがとう、ボス」

ボスはそれだけいうと、目を閉じすぐに寝息をたてた。
寝るの早すぎだよ、と思いながら、ボスのあまり見せない優しさを身にしみて感じながら部屋を出た。

ボスの部屋をでて廊下、10m先くらいに気配を感じた。

「…ベル?」
「……ばれちった」

ベルが廊下にある出っ張った柱の影から、スッと姿を現した。
しばらく沈黙が流れる。
先に痺れを切らしたのは僕で、

「部屋に、来るかい?」

と声をかけると、小さな子供のように首を縦に振ったベルは、それから僕の後ろを歩いた。

「怒ってる?」
「何を?」
「俺のしたこと」
「怒ってないよ。僕が誘ったんだから」
「でも、嫌がってたじゃん」
「まあね。でも力じゃ敵わない」

長い廊下、二つの足音がコツコツと響く。
少し強く言い過ぎたかな、と思った。
ベルから返事がなくなる。
その後は僕の部屋につくまで、お互い無言だった。

僕の部屋に入り、ソファーに腰掛ける。
お昼とは違い、ずいぶん遠くに座ったベルに紅茶を渡す。
10分ほどだろうか、お互いまた無言のままだった。
重い空気の中、ベルが口を開いた。

「俺、マーモンのこと、すきだよ」
「うん」
「オメガとか、そんなのカンケーなくて」

ベルが紅茶を持ったまま話す。
いつもの自信満々なベルと違って、初めて見る弱気な姿だった。

「信じられないと思うけどさ」
「まあね。信じられないよ」
「でも、マーモンがいなかった過去の記憶とか、ぜんぶ知って、マーモンを失った世界を知って、分かった。未来の記憶をもらってから、好きだって気付いたけど、マーモン赤ん坊だし、でもマーモン呪い解けて、元の大きさに戻って、俺、舞い上がって。スタートラインにたてたと思ってた」

考えがベルの中でも纏まってないのだろう。
たどたどしく紡がれる言葉が、弱々しい声に乗って僕の耳に入る。
なんて切ない。
僕は立ち上がってベルの隣に行った。
ベルは驚いたように僕を見上げる。
横に座ってベルの頬に手を添えた。
覗く青い宝石のような瞳が、あの時と同じ切なくて、苦しそうで、熱っぽかった。

「君ってやつは、、なんて顔してるんだい」
「…マーモン」
「そんな顔されたら、許してしまうじゃないか。」

嫌だった。
使い捨ての女のように扱われ、抱かれるのが。
ベルが僕にべったりなのは、他の女に飽きた遊びの延長なんだと思っていた。
だってベルが1人の女性に絞るなんて到底思えない。

きっと僕は、
彼の特別になりたくて。
他の女と、一緒にされたくなくて
彼を拒絶していた。
とっくに彼の特別に、なれていたのに。

だって、ベルが、泣いてるんだから。

これで、ベルの言葉が嘘だなんて、思えないんだ。

「マーモン、すきだよ」
「僕も、君がすき」

ベルは泣いてた。
僕も、泣いていた。

僕は、ベルの頬を両手で触れて彼の唇にキスをした。
彼の涙は、しょっぱくて、でもすこし甘い気がした。


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